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2012年3月24日

【この1冊】『ディーセント・ワーク・ガーディアン』

労働基準監督官がミステリーの主役に!

c120324.jpg著者・沢村凛
双葉社、定価1700円+税

 

 本書は6話からなるミステリー小説。タイトルの「ディーセント・ワーク・ガーディアン」とは労働基準監督官を指している。ご承知の通り特別司法警察職員として、捜査・逮捕権を付与された立場であり、本作でも主人公・三村監督官は、労災案件の調書・供述・タレコミ電話などから、不審を嗅ぎつけ法令違反を見つけ、是正勧告や書類送検で一件落着させていく。

 どの案件も不況を背景にした社会矛盾が絡んでいて、「普通の人が、普通に働いて、普通に暮らせる―その普通を守る仕事」と自負する主人公の正義感はかっこいい。友人の警察官に頼まれて工場内密室変死事件やコンビニ強盗事件の謎解きに手を貸し、はたまた大臣が関与する巨大陰謀事件に巻き込まれていく物語展開などはスリリングで、エンターテインメント度も抜群だ。

 36協定、最低賃金、労働安全衛生といった用語が飛び交い、勤怠記録がアリバイ崩しの鍵になるようなミステリーは、文芸界の新境地を開く話題作といえるだろう。人事・労務ご担当の皆さんには文句なしにお勧め。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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