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2015年1月24日

【この1冊】『どうする定年』

「老後難民」にならないための書

c150124.jpg著者・日経ヴェリタス編集部
集英社、定価1200円+税

 

 現代のサラリーマンにとって、50歳という年齢は何とも悩ましい時期らしい。60歳定年までわずか10年しか残っていない一方、「人生90年時代」から見れば会社人生と同じ長さの時間が残されている。本書は、そうした“悩める50歳”に向けた指南書で、サブタイトルも「50歳から巻き返し!まだ間に合うマネー対策」。資金準備を主要テーマにしているが、高齢社会の現実を考えさせる内容も盛り込んでいる。

 ユニークなのは、架空の大手電機会社の同期3人を設定し、エリート街道を突っ走る男性、マイペースを貫く男性、「おひとりさま」キャリア女性に分けて、それぞれにまつわる人生の課題を物語風に仕立てている点だ。そのままテレビドラマにもなりそう描写で、ヘタな“定年書”よりよほど面白い。

 とりわけ、50代には教育、住宅、老後という人生の「3大資金」の準備が集中する。このマネー作戦をどう乗り切るか。加えて、長い老後をどのように過ごすか。「老後なんて先のこと。仕事で忙しく、それどころではない」と取り合わない50代が後々泣きをみるかもしれない。そんな警告書にも思える。

 それにしても、60歳定年後は仲間と平日ゴルフの悠々自適生活が当然だったころに比べると、時代はサマ変わりした。それを長寿時代の幸せと思うか、しんどい重荷と考えるかはアナタ次第。そんなことも考えさせる1冊だ。 (俊)

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