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2015年2月 7日

【この1冊】『リーダーのための「人を見抜く」力』

逸材を見出し育てる指導者の眼力とは?

c150207.jpg著者・野村 克也
詩想社、定価880円+税


 本書に綴られた野球界の話は企業人事にそっくり当てはまる……と思ったら、監督自身が読書家であり、「すべてを野球に置き換えて咀嚼してきた」と告白している。どうりで語られる内容がビジネスと親和性が高いはずだ。

 例えば試合での「失敗」を巡っては、心から悔しがり「なぜだ」と考える選手は将来伸びると期待する。一方で「仕方ない、次がんばろう」と立ち去る選手に「次はない」と厳しい。目標を問われて個人成績を口にする者は退け、「チーム優勝です」と言い切るメンバーを信用する。素質だけで漫然と勝負していたらすぐに壁にぶち当たると予見し、だから技術を磨けと指導する。そのうえで「技術的限界を感じたところからプロとしての本当の闘いが始まる」と考え抜く力を求める。

 現役時代から、他チームも含め、打者・投手らを観察し、監督に就いてからはさらに広く選手たちを洞察してきた眼力に学ぶ点は多い。「成長は感謝の気持ちが支えている」と、もはやビジネス界では誰も指摘しなくなった基本から諭してくれる眼差しもありがたい。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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