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2016年4月23日

アドバンスニュース「報道局だより」4・「労政審」の存在

 あらためて言うまでもなく、日本は法治国会だ。つまり、独裁者の判断や思い付きで「明日から○○の法律を改正する」「税率を変える」ということは許されないし、出来ない。日本の媒体で強い思想と信念を持った雑誌や機関紙などの中には、「政府の暴挙・暴走」「民主主義の崩壊」「独裁国家」といったヒステリックな見出しを立てることもあるようだが、実際には選挙をはじめ、国会に法案を提出するまでのプロセス(有識者などへの検討、報告書策定の道程)を踏んでいる。

 政府が国会に法案を提出する「閣法」と呼ばれるものは、大半がどの省庁分野であっても法案提出前までに相応の“手続き”を踏む。総論的な説明では分かりにくいので、具体的な例として昨今、ひときわ注目を集めている労働法制の法案提出までの流れでお伝えしてみたい。

tayori.png 労働法制分野において、日本は国際労働機関(通称ILO)に加盟していることもあり、法案策定前に公(公益である有識者)、労(労働者代表)、使(使用者代表)の三者構成で審議することが義務付けられている。この協議のテーブルが厚労相の諮問機関である「労働政策審議会」なのだ。労政審に公益委員、労働者側代表、使用者側代表の3者が同人数で厚労相から投げかけられたテーマや課題について議論し、最終的に法案提出の内容ついて「妥当」または「(概ね)了承」を判断する。労働分野とひと口に言っても、多岐に渡るのでそれぞれのテーマ別に下部組織となる分科会や部会を設けて円滑な運営に知恵を絞っている。

 この3者のうち、公益委員は労使の主張のぶつかり合いの「行司役」の役割も務め、公益委員のうちの一人が座長を担って議事進行していくのが一般的だ。そして、このテーブルの開催日程調整や資料作りなどに奔走するのが厚労省の担当課の職員となる。この担当課は、労政審に議題が諮られる前の「たたき台」と位置付けられる、有識者による「検討会」や「研究会」の事務局と同じ担当課が担うことが通例となっている。

 さて、今回は労政審と前段となる検討会や研究会、事務局の3つの顔ぶれと役割の概略について杓子定規で表層的な説明をつづってきた。上記にウソ、偽りはないが、公労使の議論をくみ取りつつも「報告書」や「建議(答申)」、「法案要綱」などをまとめ上げるのは、どの集まりも事務局である厚労の担当課であることが少なくない。よって、報道では「労政審が方針について骨格をまとめた」とは報じずに、「厚労省が方向を固めた」といった書き方をするところもある。最近は、「虚心坦懐・互譲の精神」で労使が歩み寄ることが少なくなり、労使激突型が際立っているため、ますます公益委員と厚労事務局(職員)の「調整と決断」が重きをなしている。その背後に、政治がうごめいているのが時として厄介なのですが…

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