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2017年3月21日

【書評&時事コラム】消え行く?サラリーマンの美学

 最近、知人からの異動、転勤、退職のあいさつが増えた。昔と違って、書状よりもっぱら電子メールで来る。中には携帯メールのあいさつもある。そうか、年度末の「人事の季節」だったんだ。もう10年以上前に会社を辞め、フリーの仕事をしている身にとって、サラリーマンの風物詩はすっかり縁遠くなった。

 現役時代、私も2回、単身赴任を経験した。それぞれ2年だったが、サラリーマンにとって転勤は当たり前、単身赴任もそれほど珍しくなかった。生活の不便、家族と会えない寂しさはあったが、その分、久しぶりに家族と会えば優しくなれた。炊事や掃除など、妻に任せ切りだった家事も、少しはできるようになった。「単身赴任、悪くないな」というのが私の実感だった。

c180321.jpg この、当たり前だった風景が、もしかしたら消えて行くかもしれない。人口減に伴う人手不足を背景に、従来の「男性の正社員」だけでは労働力が足りなくなり、女性や高齢者にも戦力になってもらわなければならない時代になったからだという。

 確かに、家庭を持つ女性や体力のない高齢者が、転勤や単身赴任をスンナリ受け入れられるはずはない。働き盛りの男性にしても、妻がフルに働いていたり、老親の介護があったりすれば、「はい、わかりました」と即答はできないだろう。昔なら、即答するのが正社員の義務であり、サラリーマンの美学でもあった。私も、そうした。いま思えば、子供との接触時間はもっと欲しかった気がする。妻との接触時間はどうだったか?ノーコメント。(俊)
 

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