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2017年5月16日

【書評&時事コラム】あまり意味ない?禁煙論争

 2020年の東京五輪に向けて、受動喫煙を法規制する“程度”をめぐり、厚生労働省と自民党のたばこ議員連盟の間でもめているそうだ。「健康確保」を第一に掲げる厚労省は屋内を原則禁煙としているのに対して、族議員はたばこ税の減収や飲食業界の売り上げ減を心配して分煙にとどめる対案を出している。
 

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 屋内禁煙は世界的な潮流だから、厚労省の主張の方に分がありそうだが、そもそも日本の場合、そこまで法律でギリギリ縛る必要があるかどうか、疑問に思わないでもない。というのも、海外旅行をした人ならある程度わかると思うが、厳しい禁煙政策を打ち出している国でも、屋外喫煙などは大目にみている所が多く、私も街路のあちこちでプカプカやっている人をよく見かけた。 

 知人の米国人は、日本の「分煙」の徹底に驚いていた。カフェなどにはほぼ「分煙室」があり、外に出ても多くの愛煙家は「喫煙コーナー」で吸っている。歩きながらのくわえタバコはあまり見ないし、道路に落ちている吸い殻も少ないからだ。もちろん、「そんなことはない。私は何件も目撃している」とおっしゃる嫌煙家もいるとは思うが、多くの外国人がそう感じていることも確かなようだ。

 そうだとすれば、厚労省案を導入しても、愛煙家の数は減らないし、飲み屋も例外扱いされる30平方メートル以下の屋台が繁盛するのではないか。タバコに限らず、酒の税率など、嗜好品をめぐる議論ははっきりシロクロをつけられないことが多い。どんなに厳しく規制しても、必ずや“抜け道”が用意されていることは、古今東西の歴史が証明するところだからだ。(俊)

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