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2017年7月 4日

【書評&時事コラム】『団塊の後 三度目の日本』

主役は団塊ジュニア

c170704.jpg著者・堺屋 太一
毎日新聞出版、定価1600円+税

 

 『団塊の世代』(1976年)、『団塊の秋』(2013年)などに次ぐ、著者にとって永遠のテーマである“団塊もの”と言える。

 今回は、2020年の東京五輪が終わった後の“オリンピック不況”の真っただ中である26年ごろが舞台。そのころの日本が成熟社会に特有の「夢ない、欲ない、やる気ない」の低意欲社会に陥り、時の政権が明治維新、太平洋戦争の敗戦に次ぐ「三度目の日本」の構築に向けた大制度改正を目指すというストーリーだ。

 選挙区改正、道州制の導入、地方交付税の廃止と税制改正など、さまざまな構想が政府要人や有識者によって打ち出されるのだが、題名のようにもはや団塊の世代は主人公になりえず、子供世代の団塊ジュニアが主導権を握っている。

 一応、近未来小説の形を取り、経済産業省のキャリア一家を主人公にはしているものの、主要な舞台はテレビ討論会や各種審議会、国会や役所などであり、主人公が特に行動を起こすわけではない。小説として成功しているかどうかは議論が分かれそうだ。むしろ、小説の体裁を取った政策提言と考える方がぴったり来る。 (俊)

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