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2017年9月14日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」37・就業規則の周知とは?

Q 弊社は親会社の関連会社として設立されましたが、親会社から役員が出向されていることもあり、従業員の労務管理等は親会社の規則等に準じて行っています。就業規則についても基本的には親会社のものを利用しており、実務的に疑問点があればその都度、親会社の担当者に聞いて処理しています。今回、ある従業員に業務上不正な行為が認められたため、懲戒を検討することになったのですが、就業規則が周知されていないため処分は難しいという指摘がありました。具体的にはどのような点が問題だといえるのでしょうか。

koiwa1.png 常時10人以上の労働者を雇用する使用者が労働基準監督署に就業規則の届出を行わなければならないことはよく知られていますが(労働基準法第89条)、この届出によって就業規則の効力が発生するわけではありません。

 就業規則が効力を持つためには、労働者に対して周知されていなければなりません。この場合の周知とは、掲示や備え付け、書面での交付、パソコン上などで常時確認できる状態のことをいいます。 

労働契約法 第7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。(以下略)


 会社が労働者に減給、出勤停止、懲戒解雇などの懲戒処分を行う場合には、判例法上、就業規則上の根拠が必要とされており、労働基準法でも「制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項」(第89条第9号)を明記することが義務とされています。

 したがって、就業規則に懲戒規定があっても、適法に周知されていない場合は、その就業規則自体が無効とされることになります。監督署への届出の有無に関わらず、就業規則に基づく懲戒処分の効力自体が否定されてしまうわけです。 

労働契約法 第10条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(以下略)


 グループ会社や関連会社の中には、親会社の就業規則の全部や一部をそのまま自社の就業規則として利用するケースもありますが、周知の手続きが取られていない場合には、残念ながら効力は認められません。

 その場合は労働者に懲戒処分を課すことができず、訴訟等の紛争になった際にも、会社の主張が受け入れられることは困難なため、十分に注意していきたいものです。 

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