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2017年10月12日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」41・年俸制の割増賃金

Q 弊社では一部の営業職の給与を年俸制で支給していますが、一定分の時間外労働や休日労働の割増賃金を含むという取り扱いをしています。最近、裁判などの影響もあって年俸制の取り扱いが変わったと聞きましたが、実際はどうなのでしょうか。実務的に気をつけるべき点があればお教えください。

koiwa.png 年俸制の割増賃金をめぐっては、医師である労働者が時間外労働や深夜労働に対する未払いの割増賃金について争った訴訟で、2017年7月7日に最高裁(第二小法廷)判決が示されました。

 判決では、労働者と使用者との間に割増賃金を年俸制の中に含める旨の合意があったものの、具体的に割増賃金に当たる部分が明らかにされていなかったことから、現実に割増賃金が支払われたということはできない、とされています。

 この最高裁の判断を受けて、厚生労働省は7月31日付で「時間外労働等に対する割増賃金の適切な支払いのための留意事項について」(基監発0731第1号)を発出しました。「直ちに労働基準法に違反するものではないが」としつつ、以下のような留意点を示しています。 

(1)基本賃金等の金額が労働者に明示されていることを前提に、割増賃金に当たる部分について、時間外労働等の時間数または金額を書面等で明示するなどして、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを明確に区分できるか確認すること
(2)割増賃金に当たる部分の金額が、実際の時間外労働等の時間に応じた割増賃金を下回る場合には、差額を支払わなければならないため、「労働者の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(2017年1月20日付、基発0120第3号)を遵守し、労働時間を適正に把握しているか確認すること


 具体的な対応としては、割増賃金に当たる部分の時間数や金額を明確に区分して書面で労働者に明示すること、ガイドラインに基づいて労働時間を適正に管理した上で、実際の割増賃金が既支給の金額を上回る場合には必ず差額を支給すること、が最低限求められます。

 労働基準監督署などが監督指導を実施した事業場に対しては、割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含めて支払っているかを確認し、問題が認められた場合には是正勧告などの必要な指導を徹底することとされているため、今後は厳しい行政指導の実施が予想されます。

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