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2017年11月 7日

【書評&時事コラム】『検証働き方改革 問われる本気度』

仏はできそうだが、魂はいつ入る?

c171107.jpg日本経済新聞社、定価1500円+税

 

 今年3月、政府が「働き方改革実行計画」をまとめ、それに基づく労働政策審議会の審議、政府の改正法案の作成が進んだ。本書は、同計画がまとまるまでに、日経新聞に掲載したシリーズ「働く力再興」を加筆修正、改革に取り組んでいる企業経営者らへのインタビューやアンケート調査なども収容している。

 全体を「『働き方改革』に足りない視点」、「公正な評価と脱長時間労働」など5章で構成し、なぜ働き方改革が必要なのか、どのように制度が変わろうとしているのかを解説。法学者らの論文と異なり、企業や就労者の話などを交えながら説明しているため、趣旨が明快でわかりやすい。

 「もっと働け」から「ちゃんと働け」へ。これがキーワードだが、労使で意見が割れている「高度プロフェッショナル制度」については必要論を展開するなど、経営者寄りの論調が目立つ。「このままでは日本は国際競争に負ける」という強い危機感から、と察せられる。

 本書は、今秋の臨時国会で改正法案が審議される前提で書いているが、現実は突然の解散・総選挙によって、来春の通常国会に先延ばしされた。党利党略によってズルズルと審議が遅れる政治の怠慢こそ、本書が指摘する「問われる『本気度』」ではなかろうか。 (俊)

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