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2018年1月16日

【書評&時事コラム】『「幸福な日本」の経済学』

日本人は幸せ?それとも不幸せ?

c180116.jpg著者・石見 徹
講談社選書メチエ、定価1550円+税



 著者は1948年(昭和23年)生まれ。団塊の世代の経済学者による、日本の将来への提言だ。「全共闘世代」としてかつて世間を騒がせた世代が、日本の行く末に対して沈黙するのは無責任、というのが執筆の動機だという。

 現代日本は「格差」「貧困」などのキーワードが充満する閉塞感の一方で、圧倒的に多くの国民が現在の生活に「満足」しているという、一見、矛盾する国民意識の解明から始まり、「幸福な社会とは?」から「さらに、どうすればよいか」までの5章で構成。主に各種経済統計を駆使して、成長と幸福の関係を論じている。

 結論からいえば、人口減下の高齢社会の幸福は、税制改革などを通じた「大きな政府」によって実現すべきだが、そのためには社会的安全網(セーフティーネット)の充実や政治の信頼回復が前提になる。それだけ聞けば、ごく常識的な結論だが、著者も指摘するように、問題は政治から企業まで日本全体を覆っている決断力の欠如だ。

 経済学者の著作とあって、扱うテーマは日常的だが、分析や解釈はかなり厳密で、決して読みやすくはない。しかし、この種の問題意識を持っている人にとっては、すんなり入ってくる内容であり、“論点整理”にはうってつけの1冊。(俊)
 

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