コラム記事一覧へ

2018年4月 5日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」66・就業規則の記載と実際の所定労働時間が異なる場合

Q 弊社の所定労働時間は午前8時から午後5時までの8時間(休憩1時間)であり、すべての労働者が同じルールで勤務しています。ところが、就業規則では「1日の所定労働時間は7時間30分とする」とされ、実際の運用とは異なった記載がされています。このような場合、どちらのルールが優先されるのでしょうか。

koiwa.png 昔から存在する就業規則の改正がされていなかったり、実際の勤務時間等の労働条件が変更されていたりして、就業規則の記載内容と実態とがかい離してしまっていることがあります。このような場合、労働者との間で就業規則の記載内容が問題となることがあります。

 労働契約法第12条(就業規則違反の労働契約)では、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による」とされています。つまり、労働条件について就業規則と労働契約の内容が異なる場合には、就業規則の内容が優先されるということです。

 したがって、適正な就業規則が存在する場合には、仮にその記載内容と異なる実態があったとしても、基本的には就業規則の内容が会社のルールということになります。「改正を怠っていた」「単なる誤記があった」というのは、言い訳にはなりません。

 甲商事事件(東京地裁平成27年2月18日判決)では、就業規則の所定労働時間が「7時間30分」、実際の所定労働時間が「8時間」であった事案について、就業規則違反の労働契約の法理などを理由に就業規則記載の「7時間30分」が適用されると判断されています。

 さらに同裁判では、使用者が労働者の同意を必要とせずに一方的に定めることができるものであるという就業規則の性格を理由に、就業規則の記載内容に誤りがあった場合の責任は使用者が負うべきだともされています。

 就業規則の誤記や変更の不備は単なるミスでは済まされず、場合によっては時効分に遡って会社が賃金の差額を請求されるリスクを負うことにもなりかねません。「労働者が全員納得している」というのは理由になりませんので、常日頃から実態に即した就業規則による労務管理を徹底していきたいものです。

PAGETOP