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2018年7月12日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」80・地震の影響で出勤できないときの賃金は

Q 突然の大地震によって公共交通機関が一斉に運休となり、道路も軒並み交通規制が敷かれたため、物理的にほとんどの従業員が出勤することができなくなりました。このような場合、賃金の支払いについてはどう考えたらよいのでしょうか。

koiwa.png 先日の大阪府北部地震もそうですが、地震大国である日本では、大地震等の災害が発生してしまった際には、通勤が困難な状況になることも珍しくありません。このような場合、まず労働者の安全の確保が求められるのはいうまでもないことですが、賃金の支払いが実務上のテーマになることがあります。

 労働者に帰責事由(法的に責任を負わせる事由)がなく労働義務が履行不能になった場合、民法上は使用者に帰責事由がないときに賃金支払義務は消滅し(民法第536条第1項)、使用者に帰責事由があるときは存続するとされています(同条第2項)。労働基準法第26条の休業手当は、使用者として不可抗力を主張し得ない一切の事由を含むものと解されているため、天災地変などの不可抗力によらない限り、使用者が支払わなければなりません。

 地震等の影響により労働者が出勤することができず、やむなく欠勤した場合は、自然災害という不可抗力によるものですから、基本的には労働者にも使用者にも責任がありません。従って、就業規則や労働契約に給与を支給するという規定がある場合を除いては、原則としてノーワークノーペイという考え方になります。

 ただし、交通機関の遅延などを理由に使用者が休業を決定したり、行政からの避難勧告等は出ていないものの労働者の安全を考えて休業させたりしたような場合は、使用者が雇用管理上の判断として休業を選択したことになりますので、基本的には休業手当の支払い義務が生じることになります。

 休業手当が支給されない場合は欠勤扱いとされますが、労働者からの希望によって事後的に有給休暇への振替えを認めたり、特別休暇(有給)として扱うケースもあります。このような例では、会社独自の制度として、就業規則の規定を整備しておくことが必要となります。

 なお、平成28年熊本地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第3版)では、「労働契約や労働協約、就業規則等に労働者が出勤できなかった場合の賃金の支払について定めがある場合は、それに従う必要があります。また、例えば、会社で有給の特別な休暇制度を設けている場合には、その制度を活用することなども考えられます。このような定めがない場合でも、労働者の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合っていただき、労働者の不利益をできる限り回避するように努力することが大切です」(Q9-2)と記載されています。

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