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2018年8月 9日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」84・従業員のマナー違反を誰が指導するか?

Q 従業員10名程度で町工場を経営しています。今年初めて新卒社員を採用したのですが、能力不足なのは仕方がないとして、マナー違反にも目に余るものがあります。社長である私自身が朝礼などでも何度か指導していますが、なかなか改善が見られません。どのようにこの社員と向き合うべきでしょうか。

koiwa.png 採用や社員教育は、中小企業の経営で最も頭を悩ませるテーマのひとつです。ましてや初めて新卒社員を迎えるときは、経営者自らが不安を抱え試行錯誤するケースも少なくありません。社員のマナー違反が目に余る場合は、当然、会社として必要な対応をすることになりますが、とりわけ新卒社員の場合は丁寧な指導を心掛ける必要があります。能力不足による場合はもちろんですが、服務規律違反等についても相当期間をかけた指導を前提としなければ、懲戒処分は難しいでしょう。

 マナー違反の度合いや頻度にもよりますが、始めから懲戒処分を前提とした厳しい指導を行うというよりは、日常の業務の流れの中で自然に欠点が改善され、成長を目指せる習慣が定着していくような働きかけを行うことが大切です。朝礼など他の社員が出席している環境で叱責したり厳しい指導を行うことは、本人の名誉を失墜したりモチベーションが下がるなど、逆効果になってしまうケースもあります。

 また、とりわけマナーに関することについて最終決済者である社長が自ら指導することは、現実問題として裏目に出てしまうことも多いものです。この点については、孟子の有名な教えが参考になるかもしれません。孟子によれば、「親は決して子に(マナーを)教えてはいけない」といいます。孟子の教えについて、「親」を「社長」、「子」を「社員」に置き換えると、以下のようになります。

 “社長は正しいと思ったことを社員に教えるから、教えた通りに社員が動かなければ、当然叱ってしまう。しかし叱ってしまうと、社長の社員への愛情は傷つき、社員が社長に寄せる信頼も損なわれてしまう。そもそも、労使の関係というのは、善悪を責め合ったりしない深い情でつながっているものだ。善悪を責め合ったら、社長と社員であるゆえにかえって関係が疎遠になってしまうが、それは何よりよくないことだ。”

 もちろんケースバイケースではありますが、実際にチューター制度やブラザー・シスターなどを導入して成果を出している企業の例もあります。先輩社員が良いお手本として新卒社員の育成に関与できるよう、無理のない仕組みを考えたいものです。

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