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2018年8月21日

【書評&時事コラム】カネまみれの医療界

 東京医科大学の不正入試事件は、さまざまな意味で日本の社会を映し出している鏡のように思えてならない。公平・公正であるべき入試で、有力者の子弟の裏口入学が定着し、その分、女子の合格基準を厳しくしていた。裏口入学は寄付金集めのため、女子の排除は医師としての定着率が悪いため、という。

c180821.jpg 考えてみれば、不思議なことではない。私立の医科・歯科系大学に入るには、多額の金が必要なことは常識だ。橘木俊詔教授の試算でも、入学金、授業料、施設整備費などを合わせると6年間で1800万円以上掛かり、国立の10倍、私立理系の5倍に上る。とても、一般家庭が支払える額ではなく、親が医者といった富裕家庭でなければ無理だ。

 女子の制限理由は「出産、育児などで辞める女医が多いため」という。これは医療界の実情に照らすともっともらしい理屈にみえるが、明らかな性差別をここまで露骨に見せられると、「女性活躍」のスローガンなど吹き飛んでしまう。女子は優秀でも落とされ、バカ息子でも親が金を積めば合格できるのだから。やはり、「医は算術」の世界だ。

 こうなると、医師国家試験も怪しく思えてくる。診療してもらう患者・市民の側としても、心配でならない。今度から、病院に行ったら、担当医師に出身校を聞いて、この大学OBなら代えてもらおう。本当に優秀なOBには申し訳ないが、社会の信頼を失った代償は大きいのだ。もっとも、その前に「無礼者!」と門前払いを食いそうだが。 (俊)

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