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2018年8月28日

【書評&時事コラム】『美貌のひと~歴史に名を刻んだ顔』

「美貌」にまつわるあれこれ

c180828.jpg著者・中野 京子
PHP新書、定価920円+税

 

 人物画は風景画に比べると、その絵の成り立ちに興味が沸く。とくに、それが古今の美人であれば、なおさらだ。本書はそんな女性を中心に、24人の有名人の肖像画と、絵にまつわるエピソードを特集している。

 時代はギリシャ神話のアポロン、聖書のマグダラのマリア、ルネサンス期のイタリア貴婦人、女優サラ・ベルナール、実業家ココ・シャネルまで、まことにバラエティーに富んでいる。誰しも、どこかで1度は見たことのある名画ばかりだ。

 その解説が、また面白い。神話や聖書から題材を取った作品の寓意、写真のようなリアリティーをたたえた画布の中に画家がひそませた重要なメッセ―ジ、肖像のモデル探しなど(表紙絵も「アンナ・カレーニナ」のモデル説あり」)、「美貌」の裏に隠された意外な事実は読む者を飽きさせない。

 絵画に限らないが、芸術作品の鑑賞には“予習”がかなり効果的。要するに、全く知らずに絵を見るより、ある程度の知識なりを持ったうえで見る方がうんと楽しめる。本書はその種のガイドブックで、「怖い絵」シリーズの続編でもある。 (俊)

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