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2018年9月20日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」90・月60時間超の割増賃金の猶予措置廃止

Q 労働基準法の改正によって、今後は中小企業においても、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられると聞きました。具体的な内容について、教えてください。

koiwa.png 2008年の労働基準法改正(2010年施行)では、時間外労働が月60時間を超えた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない、とされました(第37条1項ただし書き)。ただし、中小事業主については、当分の間この規定は適用しないとされ(附則第138条)、規定の施行の状況、時間外労働の動向等を勘案し、検討の結果に基づいて必要な措置を講ずる、とされていました(平成20年附則第3条)。なお、「中小事業主」の範囲は、以下の通りです。

 

業種 資本金の額
または出資の総額
または 常時使用する
労働者数
小売業 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下


 働き方改革関連法にともなう労働基準法の改正により、2023年4月から附則第138条の規定が撤廃されることになります。これにより、中小事業主も含めたすべての事業場について、時間外労働が月60時間を超えた場合は、5割以上の率で計算した割増賃金の支払いの対象となります。労働基準法の改正によって時間外労働の上限規制の強化がはかられますが、さらに割増賃金の猶予措置が撤廃されることにより、中小企業においても時間外労働に対する対応が急務となります。

 まず、就業規則において「1か月の起算日」を定めておく必要があります。この起算日から累計して時間外労働が60時間を超えると、5割の割増賃金の対象となります。起算日の定めがないときは、賃金計算期間の初日が起算日となります。労務管理の実態に即した起算日を設定しておくことが望ましいでしょう。

 また、労働基準法では、月60時間超の時間外労働の割増賃金の「代替休暇」という制度もあります(第37条3項)。過半数労働組合または過半数代表者と労使協定を締結し、代替休暇の制度を設定することで、実際に休暇を取得した時間に対応する分の割増賃金を支払わないことができます。

 あわせて、就業規則における「法定休日」(3割5分増の割増賃金の対象となる休日)の規定の確認や、労働条件通知書(雇用契約書)や賃金台帳(給与明細)における割増賃金率の記載(月60時間以内と月60時間超の別)の設定も行う必要があります。ぜひ早めの実務対応を心掛けたいものです。

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