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2018年10月25日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」95・指揮命令に基づかない派遣労働者の残業

Q 派遣労働者が自主的に残業しており、派遣先が終業後に残らないように指摘しても、作業を続けているため困っています。このような場合でも、派遣労働者の残業代は支払う必要があるのでしょうか。

koiwa.png 労働者派遣法では、労働基準法等の適用に関する特例が置かれており、労働時間、休憩、休日等の労働者の具体的就業に関する事項については派遣先が事業主としての義務を負います。したがって、残業等の指揮命令についても、派遣元で設定された36協定の範囲内において、原則として派遣先が責任を負うことになります。

 残業も含めた労働時間については、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」(最高裁、平12・3・9、三菱重工業長崎造船所事件)とされています。しかし、使用者が明確に残業禁止の命令をしているにも関わらず、それに反して労働者が残業等を行った場合は、賃金の対象となる労働時間とはならないという理解が一般的です(東京高裁、平17・7・30、神代学園ミューズ音楽院事件など)。

 したがって、派遣先の指揮命令者が明確に残業の禁止を伝えており、その指示を守らずに残業したようなケースについては、必ずしも労働時間だとは評価されず、残業代は発生しないと考えられます。ただし、あまりに業務量が多く就業時間内に終了することが困難な場合や、日常的に一定の残業を行うことが恒常化している場合などは、黙示の指示があったとみなされることがあるため、注意しなければなりません。

 口頭での指示や命令は、理解の相違や解釈の余地が残るため、そのときは問題にならなくても後日トラブルに発展することもあります。派遣労働者の残業は必ず指揮命令者からの残業指示書に基づいて行い、残業の禁止についても担当部署から書面を交付するといった対応が望ましいでしょう。

 また、派遣元においては、派遣労働者の時間外労働のルールを明確化することが大切だといえます。たとえば、派遣労働者就業規則において、「派遣労働者は、派遣先の指揮命令者からの指示がない場合には、所定労働時間を超えて就業してはならない」といった規定を置くことが考えられるでしょう。具体的な業務や就業の実態に応じて、現実的なルールを実施していきたいものです。

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