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2018年11月27日

【書評&時事コラム】騒々しい紅葉見物

 紅葉シーズンは真っ盛り。京都などの観光地はもちろん、都内でも紅葉名所には見物の人々が押し寄せ、実ににぎやかだ。それを目当ての露天も出現して、クレープやらソーセージやらを売りまくる。テレビなども「隠れた紅葉名所」などと特集を組むから、またたく間に「隠れた」名所がまた減ってしまう。

c181127.JPG 春のサクラと並んで、秋の紅葉を楽しむ日本は「平和国家」の象徴みたいなものだから、そう目くじらを立てることもないが、それにしても、年々、ハデハデになってはいないだろうか。紅葉をじっくり楽しむ雰囲気が、失われつつあるように思えてならない。

 以前、京都市内のある有名寺院を拝観した時のこと。朝早かったこともあって、石段の参道に人影はなく、無風の道は落ち葉で敷き詰められていた。ゆっくり踏みしめて、周囲の紅葉を眺めていると、「カサッ」というかすかな音が聞こえる。耳を澄ますと、少し間をおいて同じような「カサッ」が続く。一体、何の音だろうと思ったら、モミジの枯れ葉が落ち葉の上に落ちる音だった。極小の音と言ってもいい。

 こんな音は、歓声やスマホ撮影のはしゃぎ声がウズ巻く紅葉名所では、まず聞けない種類の音だ。紅葉は目で美しさを味わうだけはなく、静寂の中で散る音を聞くのもいい。あの体験以来、私の紅葉見物は人のいない場所探しに費やされる。それも年々困難になっているのだが。(俊)
 

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