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2018年12月11日

【書評&時事コラム】「官民ファンド」は必要か

c181211.JPG 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の巨額役員報酬詐取事件に続き、今度は経済産業省所管の官民ファンド「産業革新投資機構(JIC)」の民間出身役員が、役員報酬をめぐって経産省と対立、総退陣へという事件が起きた。なんでも、最大で1億円を超える社長らの報酬が高額過ぎるという批判が出て、経産省が報酬の減額を提案したところ、「もともと経産省が提示した額なのに話が違う」とヘソを曲げたのだとか。

 確かに、非は経産省にありそうだが、それで「辞めさせてもらう」と大人げない反発を示す役員たちも、いい年をしていかがなものか。退陣理由について、社長は「報酬問題ではなく、ファンドに口を出す経産省との信頼関係が維持できない」とおっしゃるが、なぜ口を出してはいけないのか、その程度のことで崩れる信頼関係とは何なのか、一般の国民にはさっぱりわからない。

 JICは旧産業革新機構が改組して9月下旬に発足。資本金の95%超を国が出資し、役職員の一部報酬も国の認可を経て国費から支払われる。税金の使途に厳しい目が光るのはごく当然だが、それを承知で「高額報酬」をエサに民間から役員を呼び集め、さあスタートという時期にずっこけた格好だ。経産省の発想もこの程度か、とタメ息が出る。

 この際、「官民ファンド」(実態は限りなく官製ファンドだが)が本当に必要なのかどうか、国会あたりで議論すべきであろう。こんな低レベルの話でもめるような組織では、果たして成果が出るかどうか疑わしい。かつて、不良債権を回収する整理回収機構のトップを引き受けた故中坊公平氏は、無報酬で仕事にあたった。私が「それでいいんですか」と聞いたところ、「本業の弁護士で何とかやれているから」と涼しい顔で答えたことを覚えている。税金に対する感覚とは本来、そういうものだ。役所も役員も、いい加減にしてほしい。 (俊)

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