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2019年1月 1日

【ブック&コラム】定着するか、小売・外食の元日休業

 2019年、日本の雇用・労働の現場に変化が起こりそうだ。8本の法律を改正した「働き方改革関連法」のうち、まずは約70年ぶりの大改正となった労働基準法の新ルールが4月から動き出す。残業時間の罰則付き上限規制や年次有給休暇の時季指定などに加え、外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法も同時に施行される。

 1990年代前半のバブル崩壊以降、デフレ経済の中で小売や外食を中心に「安さと便利」の競い合いが熾烈(しれつ)を極め、「365日24日間営業」や「元日営業」も全国各地に急速に広がっていった。店舗を切り盛りする販売店員をはじめ、工場では主に食料品の製造ラインがフル稼働し、運送・運搬などさまざまな業種や業態に携わる人たちが年末年始に働くようになっていった。

c190101.jpg 労働者は生活者でもあるため、自分が別なサービスを受ける立場になることも。当然ながら「安さと便利」を求めてしまい、低価格が招く低賃金と過剰サービスのスパイラルは20年ほど続いた。そして、いよいよ働く人たちの心身がすり減ってきたところに、人口減少と超少子高齢化に伴う人手不足の波が押し寄せ、「働き方を見直そう」という機運が高まってきたようだ。そうなると、人工知能なるものの時代が完全に到来していない現状では「多少の不便はお互いさま」の心が大切になる。

 街を見渡すと、既に働き方に変化の兆しが感じられる。改正法の施行前ではあるが、元日、正月三が日、さらにプラス1日の休業をお知らせする掲示があちらこちらの小売店などでみられる。お馴染みの飲食チェーン店も同様の動きだ。年末年始の生産と消費は以前よりも減るかもしれないが、年間を通して営業日や営業時間にメリハリを利かせることで売上はカバーできるのではないだろうか。ただ、人は一度味わったサービスや便利さを忘れられない生き物なので、こうした流れが一過性のブームに終わらないことを願う。(司)
 

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