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2019年2月14日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」7・時間外・休日労働の上限規制と転勤

Q 時間外労働の上限規制は、転勤した場合でも通算されるのでしょうか。

nakamiya03.png 1カ月100時間、2~6カ月平均80時間は通算されます。

 時間外の上限規制は、以下の5種類設けられています。このうち①~③は36協定の内容を規制するものであることから、転勤した場合は転勤先の36協定を転勤した時点から適用し、1カ月、1年間ともに転勤前後を通算しません。一方、④、⑤は各労働者の実労働時間を規制するための規定であることから、転勤の前後を通算して上限を守らなくてはなりません。月の途中で転勤する場合、転勤前と転勤後の時間外・休日労働は通算します。2~6カ月平均を算出する場合も同様に通算します。 

上限 条件 休日労働
1か月45時間以内※ ・特別条項を定めない36協定を締結している場合
・特別条項を年6回使ってしまった場合の他の月
含まない
1年360時間以内※ ・特別条項を定めない36協定を締結している場合 含まない
1年720時間以内 ・特別条項を定めている場合 含まない
1か月100時間未満 ・特別条項の有無にかかわらず適用 含む
平均80時間以内 ・特別条項の有無にかかわらず適用 含む

※1年単位の変形労働時間制の場合、1か月42時間、1年320時間となります。

 通算する理由を労基法第38条「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」としていることから、転勤の場合だけではなく、転職の場合も上限規制が適用されることになります。転職前の時間外・休日労働時間の把握方法には規定がなく、正確な時間数を把握することは困難ですが、労働者自身が給与明細を提示する等申し出がある場合は必ず対応してください。

 転勤により異なる事業所に異動する場合は、①~③は通算しませんが、同一事業所内で配置転換が行われた場合は通算されます。自動車運転者として上限規制の適用を除外されていた者が同一事業所内で事務員に配置転換された場合、転換前の時間外労働時間を含め年720時間(特別条項無しの場合360時間)の制限を適用されることになります。

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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