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2019年2月12日

【ブック&コラム】『なぜ日本の会社は生産性が低いのか?』

「働き方改革」は個人の問題ではない

c190212.jpg著者・熊野 英生
文春新書、定価880円+税

 

 副題に「働き方の不条理を解決する」とあり、本書は日本企業の生産性が容易に上がらない要因について、詳しい分析を展開している。生産性については多数の書籍が出ているが、本書は経済理論も交えたエコノミストの科学的分析だ。

 昨今の「働き方改革」が企業に勤める会社員の個人的な努力に焦点が向かいがちな傾向に対して、著者は疑問を呈する。働き方改革によって生産性を上げようとするなら、それは企業や職場全体の工夫がメーンになるべきであり、とりわけ人材育成に対する企業の投資が不可欠と主張する。

 そう考える理由については、本書を読んでもらうしかないが、「個人の頑張り」で築いた過去の成功体験を引きずらず、組織全体の物量重視、持久戦志向、判断の柔軟性がカギになるとしている。

 多くのサラリーマンは「これだけ一生懸命働いているのに、なぜ給料が上がらないのか」「個人的には仕事のムダをなくすよう日々努めている」と思っているはずだが、本書を読めば個人の努力が組織の改善に結びつかない理由がわかる。数式なども交え、ややむずかしい記述もあるが、問題の本質がわかる内容だ。(俊)

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