―― なぜ障がい者雇用が進まなかったのですか。
渡邉 障がい者の方々の就業先といえば飲食、清掃、印刷が3大分野で、ほとんどは授産施設での就業です。そこなら親御さんも安心できますよね。
しかし、企業で働くとなると、そうは行きません。しかも、当社は発足間もない、名もなきベンチャー企業でした。そんな企業が「IT業務・事務業務」という簡単な求人募集を掛けても、親御さんとしては、倒産するかもしれないし、あるいは就業しても何かあったら解雇されるのではという心配もあったのではないでしょうか。数年、そんな状況が続きました。
では、どうすればいいか。居酒屋で社員といっぱいやりながら障がい者雇用について話し合っていると、そこにいた養護学校の先生が声をかけてくれました。それがきっかけで、その学校の生徒2人がインターン生として来てくれ、06年4月に初採用しました。
しかし、お母さんの訴えがきっかけとなって、アイエスエフネット本体よりも特例子会社の方が障がい者への配慮が行き届くことがわかり、準備段階を経て08年、「アイエスエフネットハーモニー」を設立しました。
特例子会社では5人以上の障がい者雇用が条件だったので、別の施設の協力をいただき、7人でスタートしました。7人のうち、6人が重度障がい者でした。いまも、障がいの種類や程度にあまりこだわらない「三障がい雇用」を推進しています。
―― 健常者より仕事のスピードなどは劣りませんか。
渡邉 そう思うでしょうね。ところが、違うんです。障がい者には自己表現がうまくできない人もいて、どんな仕事が自分に向いているのかわからないケースもありますが、そこをクリアできれば驚くほどの能力を発揮します。
発達障がい者のなかには、パソコンによるプログラミングに優れた人がいます。知的障がい者の場合、パソコンや携帯電話の検証作業といったこつこつと根気の要る作業を、実に正確でていねいな仕事をしてくれます。
本人の能力や向き不向きを探り当て、それぞれに合った作業してもらうことで、効率化が可能になるのです。単なる健常者の目線で出来不出来を判断する限り、能力を発見することはむずかしいかもしれません。実にもったいないことです。
障がい者雇用の実現をきっかけに、私は06年1月、「5大採用」宣言を出しました。ニート・フリーター、障がい者、ワーキングプア(働ける時間に制約のある人)、シニア、引きこもりといった人たちの雇用創造です。この人たちは、今の日本では就労が困難ですが、これをテーマに全社を挙げて取り組んだ結果、昨年には実現しました。 (次回に続く)
渡邉 幸義(わたなべ・ゆきよし)1963年、静岡県出身。86年、武蔵野工大(現東京都市大)機械工学科卒、日本デジタルイクィップメント(現日本HP)入社。96年、エヌ・アンド・アイ・システムズ副社長。2000年1月、アイエスエフネットを設立し、社長就任。NPO法人「FDA」理事長。著書に『未来ノートで道は拓ける』『社員みんながやさしくなった』。


















