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2015年12月21日

「雇用仲介事業の在り方に関する検討会」の進ちょく点検

時代に即した民間職業紹介事業を「求職者視点」で議論

is151221.jpg 厚生労働省の職業安定局が今春設置した学識経験者らによる「雇用仲介事業等の在り方に関する検討会」(阿部正浩座長)が、年内に9回の会合を開いた。現行の有料職業紹介事業の規制見直しを切り口に、「業態の垣根を越えた、時代に適したサービス提供が可能な制度」について活発な議論を展開。悪質事業者の排除を含めた求職者視点の利便性向上とともに、業態の縦割り規制の弊害の整理も検討されていく模様で、これらが人材サービス関連事業の現在の「カタチ」に影響を与えるのは必至だ。本格議論と報告書取りまとめに至る2016年の後半戦を前に、今年の進ちょく状況をダイジェストで振り返る。(報道局)

【3月31日・初会合】 「雇用仲介事業の検討会」が初会合

 検討会の委員は、座長に就いた中央大学経済学部の阿部正浩教授をはじめ、▽日本大学大学院総合科学研究科の安藤至大准教授、▽リクルートワークス研究所の大久保幸夫所長、▽早稲田大学法学学術院の竹内(奥野)寿教授、▽ニッセイ基礎研究所生活研究部の松浦民恵主任研究員、▽大阪大学大学院高等司法研究科の水島郁子教授、▽東京大学社会科学研究所の水町勇一郎教授――の7人。

 昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」に「有料職業紹介事業等の見直しについて、2014年度に検討を開始する」と明記されたことに伴う対応。現行の有料職業紹介事業に対する規制の整理・統一や、実際には一貫性のある業態が「縦割り」の制度となっている弊害の改善などが狙い。最終的には、時代に即応した職業安定法の見直しにおよぶ可能性がある。

 初会合の自由討議では、各委員が積極的かつ示唆に富んだ活発な意見を交わし、「単なる規制の見直し一辺倒ではなく、悪質事業者の排除を含めた求職者視点の利便性向上と課題の掘り下げ。かつ、制度改善に向けた方策の『最適解』にこぎ着けよう」とする問題意識と熱意がうかがわれた。

【5月13日・第2回】 紹介事業者などからヒアリング実施

 公開で看護師を中心にした紹介事業者、主婦らと第2新卒に注力している事業者、看護師・家政婦の事業者からヒアリングを実施した。その他の事業者は非公開で行った。

 この日は、人材サービス事業者の中でも、中小・零細の3事業者の代表が公開のヒアリングに招かれた。それぞれ、事業概要やビジネスモデルなどを紹介したうえで、より円滑なマッチングの活性化に向けた「行政に対する要望」を提言。看護師紹介事業者からは「看護師の短期退職による返金トラブルを回避するため、紹介料金の徴収方法を分割徴収にすべき」と指摘し、また、虚偽なども少なくないネット広告の実態を説明し、「不適切な誘導広告の法的な取り締まりを」と強く求めた。

【7月10日・第3回】 求人情報企業、大学からヒアリング

 前回に続いて関連企業の代表者らからヒアリングした。この日は求人情報を大量に扱う大手求人情報企業や、ハイクラス人材のデータベースを構築している求人情報企業、学生を送り出す側である大学の3社1校の担当者から、それぞれの業務概要と求人・求職情報の取り扱いなどについて説明を受けた。

【8月7日・第4回】 透明性の重要度増す「ヒアリングの論点整理」

 公開部分では、成功報酬型の転職サービス企業、情報提供事業者、労働者供給事業関連の労働組合協議会からヒアリングを実施。その他の事業者は、初会合(3月31日)で申し合わせた通り、同社の意向や立場などに配慮して、非公開で行った。

 第2回(5月13日)以降、同検討会での議論を深めるための「論点整理」に向けて、さまざまな形態や規模、特徴のある事業者のヒアリングを月1回ペースで展開している。IT技術の進化に連動して日進月歩でサービスの利便性が多様化する紹介事業の特性などを的確に捉えるため、やむを得ない部分があるものの、事業者による説明が“プレゼンテーション的”、あるいは主義主張や持論などに多くの時間が割かれる場面もあった。

【9月7日・第5回】 採用企業からヒアリング、現場実態を捉えた有益な質疑

 雇用仲介サービスを利用する側である採用企業3社からヒアリングを実施。採用企業の視点から整理された意見や提言などを聞き、委員らと出席した企業の担当者が現場実態を捉えた有益な質疑応答を展開した。

 さまざまな形態や成り立ちを有する事業者などからヒアリングを積み重ねており、今回はもう一方の「当事者」である採用企業の声を聞いた格好となる。

【9月16日・第6回】 連合と研究者からヒアリング、ハローワーク求人票の課題指摘

 雇用仲介に関する問題点と海外事情について有識者らからヒアリングを実施した。この日は、村上陽子・連合非正規労働センター総合局長▽有田謙司・西南学院大学法学部教授(英国事情)▽北澤謙・労働政策研究・研修機構国際研究部(仏国事情)▽徐侖希・名古屋大学大学院法学研究科特任助教(韓国事情)の4人が招かれた。

 村上氏は「連合なんでも労働相談ダイヤル」に寄せられる年間約1000件の相談から、転職絡みの相談内容を紹介。ハローワークの求人票関係が多く、多数の実例を挙げた。

 そのうえで、書面による「労働契約内容の明確化」などの課題を挙げ、求人広告や求人票については「募集内容に関する実効性ある法的規制」の必要性を強調した。

 海外事例では、研究者3氏が英国、フランス、韓国の職業紹介の事業規制のそれぞれの成り立ちと特徴を解いた。

【11月13日・第7回】 来春以降までの議論の進め方を整理

 今年3月末の同検討会設置以降、精力的に実施してきた紹介事業者や識者、団体などからのヒアリングについて概略を整理。出席した委員がそれに対する議論や意見を活発に交わしたほか、来春以降の取りまとめに向けた「今後の議論の進め方」について方針を確認した。

 年内はヒアリングを軸に置きつつ、議論としては(1)需給調整システムにおける民間雇用仲介事業の在り方、(2)職業紹介事業について、(3)職業紹介事業以外の需給調整システムの在り方、(4)その他――を概ねの項目とした。

【11月25日・第8回】 専門家からドイツの職業紹介事業をヒアリング、 「3つの論点」で闊達な議論も展開

 前半は、ドイツの労働契約法などを研究している千葉大法政経学部教授の皆川宏之氏からヒアリング。後半は、これまでの討議で絞り込まれてきたテーマのうち、「3つの論点」を挙げて委員が闊達な議論を展開し、課題を掘り下げた。 皆川氏は、ドイツの職業紹介事業の制度や仕組み、失業保険を原資とする「紹介バウチャー」の存在などについて分かりやすく説明。また、ドイツの職業紹介事業が許可制ではなく、事実上の届け出制を敷いている一方で、職業紹介者と求職者との間で交わす職業紹介契約が「社会法典」という重みのある“上位法規”の規制順守が大前提にあることを解説した。

 後半は、「需給調整システムにおける民間雇用仲介事業の在り方」として、(1)公共職業安定所(ハローワーク)と民間職業紹介事業者の役割分担、(2)業態ごとのルール、(3)IT化の進展と多様なビジネスモデルの登場を踏まえた職業紹介と他の事業との区分――の3つをテーマに、委員がそれぞれの問題意識を踏まえて意見や主張を積極的に発言するとともに、紹介および派遣事業者の欠格事由など、統一や整理が必要と思われるものがバラバラになっている現状について、事務局の厚労省に質問・指摘する場面もあった。

【12月11日・第9回】 「見直し議論」が本格化、事業所の面積要件は「不要」で一致

 職業安定法改正の提言も視野に事業者や識者らのヒアリングを活発に進めてきたが、この日からは主な許可基準や要件の必要性、または現行制度にある全件受理義務のあり方など、本質的な「見直しテーマ」について議論を開始。このうち、事業所の面積要件などは本来目的が何であるかを詰めたうえで「不要」との認識で委員が概ね一致した。

 同検討会は「現場実態に即した活性化を促す前進的思考」を基軸としているが、見直しの大前提に「求職者保護の視点に立った議論と提言」を据えており、事実上の本格議論開始となったこの日も、あらためて委員で“原点”を確認し合った。

 テーマに挙がった論点は、(1)職業紹介事業の主な許可基準等、(2)職業紹介事業者に課せられる主な義務等、(3)業務提携について、(4)その他――の4項目で、この中には面積要件の必要性や職業紹介事業者間の業務提携について、虚偽求人を防ぐための取り組みといった具体的な検討課題を挙げて議論を交わした。

 

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