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2016年1月25日

連合の2016年新年交歓会

登壇者挨拶に垣間見える「政治」スタンスと思惑

is160125.jpg 1月5日に東京都内で開かれた連合の2016新年交歓会。年明けの恒例行事だが、今年は、神津里季生会長と逢見直人事務局長の新役員体制で初めての開催となった。さらに、通常国会が前日の4日に召集されたため、国会開会後の交歓会開催は極めて異例と言える。昨年に続いて、塩崎恭久厚労相と日本銀行の黒田東彦総裁が出席したことも注目を集めたが、今回は7月に投開票が見込まれる参院選(半数改選)を見越して、例年以上に与野党を問わず国会議員の姿が見られたのも特徴だ。

 連合が支持する民主は、他の野党との選挙協力体制と連携が思うように進まず、自民・公明の「与党一強」に互角に対抗できる状況にない。そうした中、登壇して挨拶した神津会長、塩崎厚労相、黒田総裁、民主の岡田克也代表の4氏の「発言・発信」に込められたスタンスと思惑を出来るだけ忠実に記録してみる。(報道局)

神津会長の発言要旨 「すべての企業において月例賃金の引き上げを」

(連合の姿勢) 
 新年なので本来であれば、お屠蘇(とそ)気分の話をしたいところだが、連合が置かれている状況はそんなに甘くない。ちょっとピリ辛のトムヤムクン風味の変わったお雑煮的なあいさつになることをお許し願いたい。連合としてさまざまな課題があるが、まず何と言っても賃上げ、春季生活闘争だ。収益が向上した企業における年収ベースでの対応ということが報道などで取りざたされており、儲かっているところが一時金での対応中心となると、それは経済の好循環につながらないと率直に思う。

 一部の大企業だけの賃上げ、あるいは儲かったところが「ボーナスを上げるだけ」という対応では何も変わらないのは明白。世の中はこのことに対してもっと危機感を持たなければならない。政労使それぞれが責任を持ってその認識をしっかり持たなければ、デフレ脱却は夢のまた夢であるということを強く申し上げたい。連合としても一昨年、去年と一定の成果を上げてきた。しかし、まだまだ、まったく不十分だと言わざるを得ない。もっと広がりを持たなければならないわけで、(規模の)大小を問わず、すべての企業において月例賃金の引き上げがなければならない。もちろん、明日にもつぶれそうな企業には「話が別」なのだろうが、そこには私ども連合が働く者の立場で手を差し伸べていきたい。

 すべての経営者の皆さんには、このことを他人事と考えないでもらい、中小企業の経営者のご苦労は並大抵のものではないと思う。しかしながら、石橋を何度も叩いて、その結果「やっぱり(賃上げは)やめておこう」、「難しいな」とか、渡るべき橋を渡らないということだけはやめていただきたい。

 私たち連合は一人一人の働く者の思いにしっかりと向き合うとともに、組織内外への発信力を高めていくべく、あらん限りの力を振り絞っていかなければならない。近々私どもは新機軸のキャンペーンを前面に打ち出して参る所存だ。私たちはすべての働く者のための存在として、もっともっと自らの運動、自らの政策をわかりやすくさらけ出していきたい。

(政治・野党に指摘と要望)
 経済の次は政治に関して一言。特に、野党の問題について申し上げたい。与党の自民、公明の皆さんについて私は率直に申し上げて、軽減税率の問題や予算のバラまきといったことなど、内容はきわめて問題が大きいと思っている。また、与党の中、あるいは与党間でも意見はさまざまあったということだが、ただ、それでも最後はひとつになる。まあ、「まとまってしまう」という言い方が正確なのかもしれないが、その一方での、野党はいったいどうなのか。

 やはり、数の力にモノを言わせるという一強政治に対する不満を多くの国民が感じてきていると思う。さすがにもう一方の受け皿を作っていこうという動きは、少しずつ形を伴ってきているが、そのまとまり具合はいかがなものか。まだ、依然として不透明な印象を国民は持っているのではないだろうか。いずれにしても、岡田代表をリーダーに、民主党が中心となって国民の思いの受け皿を明確にしていくべきだということは言うまでもない。

 私も岡田代表をはじめ何人かの(政治グループのリーダー)の方々にお会いしてきたが、細かい話はともかく、「大きな流れを作っていく」との方向性は、皆さん一致をされておられる。一方で、一部の野党はどうみても与党の補完勢力だと明らかになってきている。

 そして、共産党については目指す世界、国家体制が異なり、これまでの歴史的経過からしても「同じ受け皿には成り得ない」と思う。したがって、多くの国民が期待するひとつのまとまりの姿というものは、本来、おのずから定まってくるはずだ。

 参議院選挙を意識するならば、残された時間はあまりない。もちろん、最後はあくまで政党間の話であり、それぞれの政治家のある意味で生き様の問題なので具体的な進め方についてはお任せするしかないのだ。歴史的にも大きな意味を持つ問題だろう。大変勝手なことをべらべらと申し上げ、「偉そうなことを言う前に、連合お前がもっとしっかりしろ」と思っておられる方々も多いだろう。私たち連合が担うべき役割、責任、まことに大きい重いものがあると考えている。その自覚をさらに強めていきたい。

塩崎厚労相の発言要旨「経済最優先、雇用拡大最優先、賃上げ最優先」

 この3年間、第2次安倍内閣が出来て、私どもは経済最優先、雇用拡大最優先でやってきたつもりだ。もちろん賃金引上げ最優先、この好循環を作るために3年間いろいろ政策を打ってきた。振り返ってみると、就業者数は約100万人、雇用者数は約160万人、3年間で増えた。失業率は4.8%から3.3%に下がった。有効求人倍率も1.25倍で、雇用情勢は好転してきた。

 先ほど賃上げ問題について話があったが、中身をどう決めるかは経営者の皆さんの判断とは言え、われわれはやはり経済再生最優先、雇用拡大、賃上げ、ということでずっと連合の味方をしてきたつもりだ。これまでの成果を噛みしめていただきたいし、それから今年の三巡目の賃上げについても、先般、官民対話で安倍総理から(経団連の)榊原(定征)会長に、経団連に出向き、改めて繰り返して三巡目の賃上げのお願いをした。

 そしてまた最低賃金も、第1次安倍内閣はもとより第2次、第3次とずっと上げてきて、これから3パーセントずつ上げていくことによって1000円を目指していくことになった。また、今年は「一億総活躍元年」の幕開けだ。第1の矢、これは言うまでもなく生産性革命によって、どうやって経済を復活させていくか。われわれ厚生労働省にとってみれば、働き方改革であり、労働生産性と役所としても正面からとらえて、金融機関とも組んで企業を強くしていく。そして、働く人たちの雇用、給料が上がっていく、もちろん企業も強くなることを実現していきたい。

 第2の矢の子育て支援なども、実は働き方と密接であり、正社員にどう転換していくか。待遇改善をどう図っていくか。厚労省の中に本部を作り、今月中にプランを作って実行に移したいと考えている。第3の矢の介護離職問題だが、「介護離職ゼロ」だけではなく、介護で働く人たちの離職もゼロにしたい。

 いよいよ国会が始まった。私どもは労働基準法の改正をはじめ、すでに提案して国会にある法律は3つ残っている。新たに今年は7つの法律を出す予定だ。その中には雇用保険法の改正、これは高齢者の適用拡大をしていく、あるいは介護休業を分割して取れるようにするといったことも含めてこの法律を出す。しっかりと連合の皆さんのご意見を承りながら、それを踏まえてこの国会で成立を期してまいりたい。

黒田総裁の発言要旨「賃金上昇は日本経済の持続的な成長に不可欠」

 昨年は初めて(連合の新年交歓会に)お邪魔をしたこともあって、皆さんの前でごあいさつ申し上げることができなかったのだが、その時、翌日の新聞には「日銀総裁、連合新年交歓会に異例の出席、賃上げにらむ?」といった形で賃上げという言葉を含みつつ最後にクエスチョンマークがついた見出しで取り上げられたと記憶している。

 今年はせっかく壇上でご挨拶できるので、このクエスチョンマークがつかないようにしていただけるよう私の思いをわかりやすくお伝えしたい。日本銀行はご承知のとおり現在2パーセントの物価安定の目標の早期実現をめざし、大胆な金融緩和を実施した。必要と判断すれば、さらに思い切った対応をする用意がある。2パーセントの物価上昇は必ず実現する。なぜなら日本経済がデフレという縮小均衡から抜け出して持続的に成長し、子供や孫、さらにその先の世代まで生活水準を落とすことなく暮らしていくためにはそれが必要だと考えているからだ。

 しかし私たちは「物価が単に上がればよい」と考えているわけではない。そもそも2パーセントの物価上昇はそれに見合った賃金の上昇がなければ持続可能とは言えない。歴史的にみても物価と賃金は連動している。つまり、賃金の上昇は日本経済の持続的な成長のために不可欠だ。

 現在失業率は20年ぶりの低水準になり、労働市場は極めて逼迫した状況にある。今後、女性や高齢者の労働参加率が高まったとしても、簡単には労働需給が緩むということはないと思う。その一方で、企業収益は全体として過去最高水準となり、もちろん業種や企業規模によってバラつきがあるので、ひとくくりにすることはできないが、労働者側にとって強い追い風が吹いている環境にあると思う。日本銀行はやるべきことを頑(がん)としてやっていく。政府も成長力を高めるためにやるべきことははっきりしている。それぞれが、各々の役割をしっかり果たし、よい一年にしよう。

民主・岡田代表の発言要旨「経済成長と、成果を再配分するのが政治」

 今日は各政党の代表者の皆さんもお見えだ。先ほど塩崎さんが厚労大臣という立場で挨拶したので、私は野党を代表する形で挨拶させていただく。何が野党か、定義がいろいろあるが、今から私が話すことが「その通りだ」と思う方は野党だという風に考えていただきたい。

 さて、先ほどの厚労大臣のお話、私は非常に苦々しく聞いていた。自分に都合のいいことだけ取ればこういう言い方もできるのだな、と改めて感じた。昨年は派遣法の改正が残念ながら成立した。そして、この国会以降は労働基準法の改悪が議論される運びだ。長時間労働は日本の悪幣。これがさらに強まってしまうかもしれない。そのことを非常に懸念している。この国会で議論されるということになれば、われわれは全力を挙げてその阻止に向けて頑張りたい。

 経済成長は重要。生産性を高めることも大事。私はそのことははっきりと申し上げたい。しかし、同時に経済成長だけではなく、その成果をきちんと再配分する、それこそが政治じゃないかと思う。格差の拡大、世界的に言われているが日本も例外ではない。そして厳しい状況の中で、苦しんでいる人たちがたくさんいる。その生活を底上げする、そして所得を再配分する、それこそが政治がしっかり取り組まなければいけない問題だ。

 今、日本の政治は大きな分岐点にある。政権交代が可能な政治に戻せるかどうか。それが夏の参議院選挙だ。しっかりとここで安倍政治の暴走に歯止めをかけて、もう一度次の総選挙で政権を担えるように、しっかりと頑張っていきたいと思っている。

 

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