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2016年3月14日

来春卒業の大卒就活が解禁

売り手市場の「短期決戦」

 来春卒業の大学生・大学院生に対する企業の会社説明会が3月から解禁され、学生の就職活動が始まった。昨年と同じ時期だが、企業側の選考は昨年の8月から今年は2カ月前倒しされて6月になった。いわば「短期決戦」となったわけだが、景気拡大による人手不足を反映して、今年は昨年以上の「売り手市場」と言われるだけに、企業側の焦りが随所に見られる。(報道局)

 前倒しは経団連の指針に基づいたもので、昨年、学生の学業優先を目的に選考時期を4月から8月に後ろ倒ししたところ、“フライング”をする企業が相次ぎ、学生側の不信感を高めたうえ、結果的に就活期間が長期化したことに対する反省を踏まえたものだ。しかし、説明会の解禁時期は3月から変更しなかったため、今年は就活期間が短縮されることになった。

 これを受けて、企業の中には土日を中心に合同説明会や単独説明会の回数を増やしたり、インターンシップ(企業内実習)を1日だけに短縮する「デイインターン」を実施するなど、学生側の負担減とPR強化を目指して対応に努める企業が増えている。インターンシップの短縮化の「是非と課題」については、現実と理想が交錯する過渡期にある状況だ。

is160314.jpg 両者を仲介する大手人材関連企業は、東京を皮切りに全国で企業説明会を開催。12日はディスコが東京ビッグサイトで「キャリタス就活フォーラム」を開き、出展企業約800社に学生約3万5000人が訪れる国内最大規模の合同説明会となった=写真。週末のため私服もOK、人事担当者らと気軽に話せるソーシャルパーティーも企画するなど、雰囲気作りに工夫を凝らしていた。

 同社によると、企業側の採用意欲は昨年以上に高く、昨年の採用人数が未達だった企業ほど、今年で挽回しようと説明会に優秀なスタッフを送り込んで“呼び込み”に注力する姿勢が目立つという。学生側には有利な状況だが、「仕事の内容そのものより、福利厚生や産休・育休といった就労環境に注目する学生が増えており、自分がどんな仕事をしたいのかを考える真剣味があまり伝わって来ない」(事業推進本部)という。

 リクルートワークス研究所が昨年12月に発表した「2017年採用見通し」調査(4794社)によると、採用数が「増える」と答えた企業の比率は13.4%だったのに対して、「減る」と答えた企業は4.2%となり、「増える」から「減る」を引いた“採用ID”はプラス9.2ポイントとなった。

 これは昨年を0.5ポイント上回り、2012年以降6年連続のプラスで、過去最高の数字。飲食サービスや情報通信など慢性的な人手不足にあえいでいる業種を中心に、ほとんどの業種がプラスになっている。また、4月から施行される女性活躍推進法をにらみ、女性の採用比率を「増やす」企業が14.1%に上った。これまで女性の採用数が少なかった自動車、機械、プラントといったメーカーが多く、女子学生にとってはチャンスが拡大しそうだ。

「オワハラ」の横行、昨年を上回る?

 ディスコが2月に実施した企業の採用方針調査(1298社)でも、ほぼ同じ傾向がうかがえ、“採用ID”はリクルートをさらに上回るプラス23.4ポイントに達している。そのため、採用活動では大企業を中心に76.4%の企業が「厳しい」とみており、採用する学生の「質」にこだわらず、人数の確保を優先する企業が2割に迫っている。

 こうした事情を背景に、採用スケジュールの順守については、「経団連加盟・非加盟に関係なく、順守すべし」は17.6%と昨年より6.2ポイント減少。一方、「守らなくても仕方がない」という企業が最多の39.2%を占め、IT企業では4割を超えるなど、経団連の協定が有名無実化する可能性を強めている。

 経団連が2年続けて採用スケジュールを変更したことが不信感につながっているとみられ、企業が採用学生に就活を終えるよう強制する「オワハラ」の横行も昨年以上に懸念される。企業の終身雇用がなし崩し的に形骸化し、「正社員中心主義」の弊害が鮮明になっているにもかかわらず、新卒一括採用方式だけは容易に改善されそうにない。

 

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