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2016年6月20日

日本人材派遣協会の15年度WEBアンケート調査

3年連続で賃金水準が上昇

 日本人材派遣協会(水田正道会長)は14日、2015年度「派遣社員WEBアンケート調査」の結果を発表した。同調査は、派遣社員の就労実態や本音を明らかにすることを目的に実施しており、今回で9回目。今年3~4月にインターネットで実施、6220人から得た有効回答のうち、現役の派遣社員3249人の回答をまとめた。(報道局)

人手不足は大企業より中小企業が深刻

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 多くの派遣社員が注目する「賃金」(時給制)については、「1500円~1750円未満」が最も多い34.9%を占め、「1250円~1500円未満」が30.4%で続いた=グラフ。平均は1437円で、前年を72円、5.3%上回った。平均時給は比較できる13年度の1360円、14年度の1365円から3年連続で上昇しており、景気回復に伴う人手不足を背景にした派遣需要の拡大が賃金水準を押し上げている。

 業務別でも、多数を占める「オフィス系」が1423円(前年比44円増)、「営業・販売・サービス系」が1313円(同59円増)、「IT技術・通信系」が1708円(同71円増)など、ほぼすべての業種で上昇。同時に、「オフィス系」では従業員1000人以上の大企業の1431円(同11円増)に対して、99人以下の中小企業では1414円(同73円増)となり、企業規模による賃金差が縮小。人手不足の影響は、大企業より中小企業の方がより深刻であることをうかがわせる。

 また、今後の働き方については、「3年以内の希望」としては「派遣」が42.3%、「正社員」が32.4%で、派遣希望の方が多かった。これが「4年目以降の希望」になると、「派遣」は16.7%、「正社員」が39.9%と逆転している。

 「当面は派遣だが、いずれは正社員」という希望は例年の傾向だが、前年の調査では「当面の希望」として「派遣」が67.0%、「正社員」が18.8%で、「数年後の希望」では「派遣」が14.9%、「正社員」が44.7%だった。前回に比べると今回は「当面の働き方」で「派遣」の希望が減り、「正社員」希望が増えているのが特徴。「4年目以降」でもほぼ同じ意識が続いていることがわかった。

数年後の正社員志向上昇は法改正が要因のひとつ

 これは、昨年施行された改正労働者派遣法で、派遣期間の制限のない「政令26業務」と期間制限のある「自由化業務」の区分が廃止され、派遣元で有期雇用の場合、「個人単位」と「事業所単位」の(いずれも上限3年)の新しい「2つの期間制限ルール」が影響しているとみられる。また、人員確保に向けて多くの企業が非正規の圧倒的な割合を占めるパート・アルバイトを含む働く人の処遇改善を図り、直接雇用の無期雇用化または正社員化をする動きが活発になってきた点も、派遣社員の正社員志向を強める要因になっている模様だ。

 ただ、派遣先企業から正社員の直接雇用を打診された派遣社員の割合は8.9%程度であり、派遣社員側も正社員になっても「勤務地の変更(転勤)は避けたい」とする人が65.2%に達していることなどから、正社員化の道が急激に大きく広がっているわけではない実態も垣間見える。関連する動きとして派遣元企業は、法改正で義務付けられた派遣社員のキャリアアップ(体系的な教育訓練の義務化)に施行前から注力しているところが多く、派遣社員の「現状希望」や「正社員希望」のいずれにも応えられるキャリア支援の充実に余念がない。

 同調査の対象3249人のうち、女性は91.1%。平均年齢は39.4歳で、年齢層は「40~44歳」の21.8%、「35~39歳」の18.8%が中心。8割以上が正社員の経験者。約6割が未婚だが、「子育て中」も約3割いる。

 

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