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2016年9月26日

女性の就労促進、税制面からも支援

「配偶者控除」から「夫婦控除」へ

 政府の「働き方改革」の議論が本格化するのと同時に、働き方改革を側面から推進する税制面の議論も熱を帯びている。税制改革の中心課題は「配偶者控除」の見直しで、政府も自民党も税制調査会が動き出した。(報道局)

 現在の配偶者控除は、夫の年収に関係なく、被扶養者となっている妻がパートなどで得た年収が103万円を超えない場合、夫の所得から38万円が控除される。103万円を超えると、141万円未満まで段階的に控除額が下がる(=税負担が増える)「配偶者特別控除」が適用される。また、130万円を超えると、妻にも健康保険や年金の社会保険料の負担が発生する仕組みだ。

 多くの企業もこの制度に沿った就労体制や賃金体系を組んでいる。例えば、103万円を超えると、夫の勤務先がそれまで支給していた「配偶者手当」や「扶養手当」を削減する。130万円を超えると、企業にも社会保険料の負担が発生するため(負担は労使折半)、妻の勤務時間などを抑えて負担が生じないように調整する、といった対策だ。前者は「103万円の壁」、後者は「130万円の壁」と呼ばれる。

10月から「130万円の壁」が一部崩れる

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「専業主婦」は死語になる?

 「130万円の壁」については、従来は週30時間以上のパート勤務が対象だったが、この10月から壁が低くなり、従業員501人以上の企業で働くパートで週20時間以上、年収106万円以上であれば社会保険の負担が生じる。ひとまず、「130万円の壁」が部分的に「106万円の壁」へと低くなり、その分、手取り収入は少し減る可能性が高いが、将来的には社会保障の恩恵を受けられることになるため、長期的にはメリットが大きい。

 配偶者控除は、「夫は仕事、妻は家庭」という高度成長期に定着した男女分業時代の創設で、専業主婦向けの税制だったが、近年は「女性の自由な就労を妨げ、共働き世帯の増加に逆行する制度」という批判が強まり、制度の見直しを求める声が強まっていた。これに対して、税負担や社会保険料の負担を避けたい主婦側の多くが現状維持を望んでおり、政府も税制調査会などで議論はしたものの、本格的なメスを入れるには至らなかった。

 しかし、この制度が女性の本格的な社会進出を抑制する一因になっている点は間違いないことから、安倍政権が掲げる「働き方改革」の一環として、自民・政府の税制調査会もようやく重い腰を上げて制度改革に動き出したというのが真相だ。

 今のところ、配偶者控除に代わる案としては、妻の働き方や年収に関係なく、夫婦であれば一定の控除の対象になる「夫婦控除」が有力視されている。現在、103万円以下の場合は「基礎控除」の38万円と合わせ、給与所得から76万円が控除されるが、新制度では専業主婦世帯も共働き世帯も対象にすることから、税収に及ぼす影響も無視できないため、夫婦控除には年収に800万~1000万円といった一定の上限を設ける案もある。また、基礎控除額と夫婦控除額の両方とも変更する可能性もある。

 配偶者控除の場合、現在は約1500万人が適用を受け、その分の税収減は約6000億円とされる。夫婦控除を配偶者控除に単純に“上乗せ”する形で実施すれば、所得増加分の所得税などは増えるが、控除額も膨らんでその分の税収は減るため、どの辺を落としどころにするか、議論は錯綜しそうだ。

 制度改正の中心は税調での議論になるが、安倍首相が議長を務める「働き方改革実現会議」や労働政策審議会、さらには26日から始まる国会での議論も加わるとみられることから、どんな形で“着地”するか、動きが注視される。
 

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