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2017年10月30日

日本生産技能労務協会・青木秀登会長に聞く (下)

モノづくりのカギ握る「人材の高度化」に主眼

―― 技能協は教育訓練の充実による「人材の高度化」に注力していますが、その狙いは。

sc171023_2.jpg青木 日本のモノづくりの未来を考えた場合、人材育成を通じた人材の高度化はぜひ進めなければいけません。競争に勝ち抜き、産業の競争力に磨きをかけていくには、モノづくりの現場において中心的な役割を担う人材を育成し、確保する重要性が高まっています。

 技能協としても、これまで品質管理や生産管理、法令、マネジメント研修など教育訓練を充実させてきました。最近では、一昨年の改正派遣法で定められた教育訓練の実施を支援するため、モノづくりの現場で働く人たち向けの研修用のテキスト、DVD、e-ラーニングを開発、提供しており、多くの会員企業に利用いただいています。

 一方で、こうした教材などによる教育も大切ですが、人材育成には実際の職場での仕事を通じた技能向上がそれ以上に重要だと感じています。労働者のキャリアアップに対するモチベーションを高め、より高い技術、技能を修得し経験してもらえるように、配置転換などを考え、クライアント企業と協力して人材の高度化に努めていきたいと考えています。

―― 厚生労働省の委託事業である製造請負優良適正事業者の「認定制度」がスタートから7年を迎えました。現在、54社が認定を受けていますが、今後の展開や認定の意義を教えてください。

青木 認定制度は徐々に認知が広がっています。最近では、業者の選定コンペで認定を取引条件に挙げたり、取引中の業者に早期の認定取得を推奨したりするクライアント企業も出て来るなど、認定の取得が競争に有利になる事例がみられるようになってきました。取得のハードルがかなり高いのは事実ですが、ぜひ挑戦していただきたいと思っています。認定取得作業を通じて、業務の見直し・改善が行われたり、従業員のモラール(士気)がアップするなどの効果も報告されています。技能協も「製造請負ガイドブック」や「製造請負の好事例集」を発行して認定取得をサポートしています。

 一方、派遣契約などを請負に切り替える動きも出てきており、「まずは請負化の基本を教えてほしい」という会員企業の要望も増えています。このため、勉強会や認定取得企業による説明会を全国で開いています。具体的な事例を通じて学ぶのが、一番の近道でしょうから。

―― 人材サービス事業への注目度は社会的に高まっています。製造派遣・請負の分野が果たす使命と役割は。

青木 業界は社会的批判にさらされた時期もありましたが、その後、業界挙げてコンプライアンスの徹底や労働者の雇用の安定、処遇の改善等に努めた結果、誤解や偏見はかなり少なくなったのではないかと思っています。近年の人手不足や働き方改革も、業界の存在理由を高める要因の一つになっていることを感じています。

 我が国の製造業が厳しい国際競争力の中で勝ち残っていくうえで、製造派遣・請負業は、重要な一角を担っていると自負しています。今後、労働力人口が減少していくことを考えれば、この業界が労働者から、メーカーから、そして社会から信頼されることが本当に重要だと考えています。高邁な理想ではなく、まず適正な労働環境の提供や人材育成など足元からできることを地道に積み重ねていく。そして、ディーセント・ワークを提供する業界として歩んでいき、社会的な評価をいただけるまで不断の努力を続けます。(おわり)

 

青木 秀登氏(あおき・ひでと)1967年、群馬県出身。1994年、ランスタッドの前身にあたるフジスタッフグループに入社。グループ内のインターエージェント、アイプレスの代表取締役社長やアイラインの取締役などを歴任して、2011年ランスタッド・ジャパン設立時に執行役員となり現職。2005年に同協会の理事に就き、政策広報委員長などを歴任し、2013年から副理事長を務めてきた。今年9月20日の理事会で会長に就任。

 

【日本生産技能労務協会】国内唯一の製造派遣・請負の業界団体で、加盟・準加盟、賛助会員など約150社。製造業で働く派遣労働者の約半数を占める。労働者の労務・管理の安全を図り、製造業が必要とする技能労務者の養成を行う。公益法人制度改革に対応し、2012年から一般社団法人へ移行。事務局は東京都港区。略称は英語の頭文字を取った「JSLA」または「技能協」。ホームページはhttp://www.js-gino.org/

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