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2018年1月 1日

通常国会の「働き方改革関連法案」、重要広範議案に指定へ

「法案修正」と「会期延長」の有無が焦点、施行期日に影響

is161003.JPG 第196通常国会が1月22日に召集される。政府はすぐに2017年度の補正予算案と新年度予算案を提出し、2月から衆院での審議を本格化させたい構えだ。また、4月以降に審議入りとなる予算外法案では、労働基準法や労働者派遣法など8本の改正法案を束ねた「働き方改革関連法案」に注目が集まる。労基法改正案を中心に与野党の対決法案として重要広範議案に指定されるのは必至の情勢だ。(報道局)

「高度プロ」の創設などが与野党の対決軸に

 通常国会の会期は、6月20日までの150日間。昨秋の衆院解散に伴い、政府が昨年9月28日までに提出していた法案はすべて廃案となった。このため、先の特別国会以降、各種法案は新たに上程する格好となる。この動きを「働き方改革関連法案」に当てはめて見てみると、

1、高度プロフェッショナル制度(高度プロ)の創設などを柱とする15年4月提出の労基法改正案は、衆院解散によって廃案となった。(法案取り下げの衆院本会議の手続きが不要に)。

2、特別国会では対決法案の提出を避けたため、通常国会で提出される。

3、「高度プロ」創設など15年4月提出の法案の内容は、関連法案の労基法改正案の中に微修正を加えて盛り込む。

 「高度プロ」創設や裁量労働制の対象業務拡大などについては、与野党の対決軸となるだけに、国会審議の展開次第では「部分修正や付帯決議の内容」が焦点となる模様だ。また、政府が当初見込んでいた昨年12月の法案成立が最短でも約半年は遅れるため、法律案要綱に記された施行期日「原則2019年4月」は項目別、あるいは大企業・中小企業別に先送りとなる可能性が高まる。さらに、通常国会での成立を確実にするには「会期延長」も想定される。

8本の束ね法案の骨子

 「働き方改革関連法案」は、政府が「長時間労働の是正」と「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」(「同一労働同一賃金」の導入)を目指して関連する8本の法改正を一括して国会提出し、成立を狙っている。野党が賛成する法案もあれば、断固反対の法案が混在しているのが特徴だ。束ね法案の提出を前に、関連法案の主な骨子を整理する。

 まず、「長時間労働の是正」では、時間外労働の上限について労基法を改正し、
①月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度に設定する。※自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外あり。

②月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)について、中小企業への猶予措置を廃止する(※施行から3年後)。また、使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする。

③企画業務型裁量労働制の対象業務への「課題解決型の開発提案業務」と「裁量的にPDCAを回す業務」の追加と、「高度プロ」制度を創設する。

 このほか、勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法)や産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法など)を推し進める。

 次に、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」では、不合理な待遇差を解消するための規定を整備するため、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の3法を改正する。改正の方向として、
①労働者に対する待遇に関する説明義務を強化する。

②短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明を義務化する。

 派遣法改正では、(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇、(2)一定の要件を満たす労使協定による待遇――のいずれかを選択することを義務化し、これらの事項に関するガイドラインの根拠規定を整備する。

 上記の通り、骨子を見ただけでもそれぞれの改正内容が“重量級”であり、大企業、中小企業を問わず対応が容易でない。それらを8本束ねて一括上程する「働き方改革関連法案」の審議の行方は通常国会の最終盤まで注視が必要だ。

 

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