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2012年9月 1日

【この1冊】『絶食系男子となでしこ姫』

ついに「絶食系」になっちゃった日本人男性

c120901.jpeg著者・山田昌弘、開内文乃
東洋経済新報社、定価1200円+税


 タイトルと副題「国際結婚の現在・過去・未来」で大体の予想はつくだろうが、本書は「アジアのグローバル・エリートと結婚する日本人女性の急増」に焦点を当て、その経済的、心理的背景を分析したもの。言うまでもなく、「草食系男子と肉食系女子」をさらに発展させたネーミングだ。

 「絶食系男子」とは、好きな女性がいても告白しない草食系にとどまらず、そもそも異性との交際を諦めている、または恋愛欲求さえ持たない男性。「なでしこ姫」とは海外に活躍の場を求める日本人女性で、本書では、特にアジアに飛び出し、そこで国際結婚する女性、と定義している。もちろん、世界を制覇したなでしこジャパンをもじったもの。相変わらず、ネーミングはうまい。

 日本人の国際結婚といえば、これまでは「金持ち日本」の男性目当てに、中国やアジア諸国からやって来る女性が多かった。最も多いのは韓国人との結婚だが、これは「在日」という特殊要因のため。

 しかし、近年は日本以外のアジア各国の経済成長が著しく、生活力旺盛な男性が増えると同時に、日本人男性の“絶食化”が進んだため、優秀な日本人女性が仕事も結婚もアジアに目を向け始めたという分析だ。

 その背景には、日本における正規・非正規の労働格差の拡大と女性差別的慣行があるという。正社員として安定した人生を送れそうな男性が年々減少する一方、出産・育児などでの女性のハンデでは容易に減らない。

  それならいっそのこと、伸び盛り経済で自信にあふれるアジアで就職し、そこで出会った男性と結婚する方が、充実した人生を送れる。本書には「なでしこ姫」たちへのインタビューなどもふんだんに収めてあり、その辺の心情はよく伝わってくる。

 だが、取り残された日本の「絶食系」男性は一体どうすればいいのか。本書もそこまでは触れていないが、反発の大合唱が沸き起こ……らないの? (のり)

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