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2014年9月18日

木曜日のつぶやき142・与えられし命の半生記③

ビースタイル ヒトラボ編集長 川上敬太郎氏

 2年の葛藤の末、命がつながった。大学進学にあたり、一つ心に決めたことがある。

 過去を全て捨てて、目の前のものを受け入れること。与えられたおまけの人生の選択を自らの感性のみに託して、一歩を踏み出した。それが功を奏したのか、大学ではかけがえのない仲間をたくさん得ることができた。

 「おまえな、派遣会社に就職すると派遣されんねんやぞ」。

c140918.JPG いざ就職活動となって、人材派遣会社ってどんなところですか、と大学の先輩に尋ねたところ、先の回答をもらった。当時、人材派遣に対する一般的な認識はそんな感じだった。

 就職活動で人材派遣会社に絞った背景には人生の葛藤がある。社会人としてどんな仕事に関わろうかと考えた時、生きるために必要な最も根本的なものにフォーカスした。衣食住というが、それらも仕事があってのこと。生きるためにはまず仕事が必要である。

 就職した人材派遣会社は創業社長が女性、営業リーダーも女性、そもそも女性社員の方が多い。幼いころから働く母を見て育った私には、ごく自然な会社に映った。入社早々、女性の先輩社員から「うちの会社は女尊男卑だから」と言われたのには閉口したが。

 前職で女の子扱いされることに反発して転職してきた人が多かった。たくましく、かっこいい女性たちが多数活躍する業界。それが、社会に出てから一貫して人材派遣業界に抱き続けている私のイメージだ。

 社会に出てからも、学生時代に感じていた葛藤は変わらない。しかし葛藤にとらわれることは随分少なくなった。20歳で1度人生をリセットし、目に映るすべてのものを懐疑的に見るのではなく、受け入れることを選択したことが幸いしているように思う。

 人生は、その瞬間に何を選択したかの繰り返しで構築されていく。

 まだ母のお腹の中にいた時、大学病院という選択肢がなかったら。大学受験で自己推薦という選択肢がなかったら。そこに選択肢があったことが、私のような葛藤だらけの人間に生きる道を与えてくれた。そして今、人材サービス業界に身を置き、人々に就業選択肢を提供する仕事に携わることができている。

 そんな与えられし命への感謝を込めつつ、このコラムを締めることにする。

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