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2017年6月20日

【書評&時事コラム】『美女の日本史』

近代日本の「美女」が大集合

c170620.jpg別冊宝島編集部、定価1300円+税

 


 この出版社からこのタイトルで出た本となると、どうしてもマユツバものに思われがちだが、本書はそこそこ読み応えがある。近年、NHKなどの歴史ドラマの主人公になるのは女性が多いことを考えると、それなりにタイムリーな企画だ。

 時代は幕末・明治から昭和初期まで。歴史上の美女が124点の写真とともに紹介されているが、みどころは写真自体が貴重だった幕末・明治の女性たちであろう。社会の価値観が180度ひっくり返った明治維新の荒波をどうやって乗り越え、さらには時代を引っ張って行ったかがわかる。一人一人の話はこれまでにも断片的に紹介されており、本書もネット情報のレベルだが、それを“一堂に会した”ところがミソということか。

 シーボルトの娘で日本初の女医となった楠本イネ、世間の評価と実像がまったく異なる「唐人お吉」、桂太郎の愛妾となった安藤照子ら、美人ゆえに数奇な運命をたどった女性も多く、近代史を彩ったのが男性だけではないことがよくわかる。

 それよりなにより、まずは現代に残った写真こそが、ビジュアル系本書の最大の売りもの。ずらりと並んだ美女群を見ると、「女性の容姿は武器になり得る」という印象を強く受ける。もっとも、その「武器」だけでは人生の成否につながらないことは、昔も今も同じ。いろいろな意味で、面白い1冊ではある。(俊)

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