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2017年9月12日

【書評&時事コラム】『サザンオールスターズ 1978~1985』

「初期黄金時代」を“思い入れ”解説

c170912.jpg著者・スージー鈴木
新潮新書、定価800円+税

 

 構造的な出版不況で、文庫、新書の性格もサマ変わりしたが、本書のような内容が堂々と新書の仲間入りを果たすというのも不況の象徴か。本書は、新書の使命である「啓蒙的役割」はゼロ。サザンオールスターズのファンにとっては「胸騒ぎの音楽評論」だが、ファンでない人にとってはその辺の“駄本”と同じ。大体、サザンを“聴く”こともしないで、“読む”なんて、邪道もいいところ。と思いながら、一気に読んでしまった。

 タイトルにあるように、サザンのデビュー時から、原由子の産休でグループ活動を一時中断する85年までの「初期黄金時代」のほぼ全曲を解説。「勝手にシンドバッド」から「いとしのエリー」「夏をあきらめて」「YaYaあの時代を忘れない」など、今となっては懐かしのヒット曲から、ファン以外はほとんど知らないアルバム曲まで、1年単位で詳細に取り上げている。

 曲によっては絵入りのコード進行や曲調の変遷も解説し、他ミュージシャンとのエピソードなど、マニアックな話が満載で、著者の尋常でない思い入れがイヤでも伝わってくる。下ネタ曲などは歌いながら読むと、雰囲気がまことによくわかる気になるから不思議。

 結局、サザンの曲って一体何なのか、よくわからないまま終わっちゃうのだが、ここはぜひ「後期黄金時代」の解説第2弾を期待したいところ。いろいろなことがあって、2013年の活動再開以降は、言ってみれば「ピースとハイライト」と「ヨシ子さん」が“併存”しており、今になってなお、つかみどころがないからだ。「それがサザンだ!」などとエラそうに言うつもりもないし。 (俊)

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