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2018年6月26日

【書評&時事コラム】"手の平返し"報道

 サッカーワールドカップは、下馬評と打って変わって日本の活躍がすごい。サッカー大好き人間の1人として、私も日本の2試合はテレビに釘付けとなり、ついでに同じグループの他国の試合も気になるので、つい見てしまう。お陰で、このところ寝不足だが、「大会期間中ぐらいは、まあいいか」と仕事もサボり気味。しかし、どうにも我慢できないことがある。メディア、それもテレビの“手の平返し”報道(と呼べるかどうかは別にして)だ。

c180626.jpg 確かに、日本の2試合は多くの予想を裏切る大健闘だと思うし、得点シーンなどは何度見ても気持ちの良いものだ。しかし、である。ある民放局ではそんな得点シーンと、それに絡む選手たちの絶賛に終始するだけで、失点シーンはほとんど流さず、OBらの分析もない。勝負の世界は「勝ってなんぼ」だから仕方がない面もあり、「大会を盛り上げるため」「お祭り騒ぎでいいじゃないか」といった考えもわからないではない。

 だが、大会前の報道ぶりと180度違うフィーバーぶりに、いささかウンザリしているのは私だけか。日本サッカーのレベルアップを本当に望むのであれば、得点のどこが良かったのかは当然だが、それ以上に失点のどこが悪かったのかも、OBらのプロが客観冷静に分析してファンに示してほしいものだ。その方が説得力もあるし、誰も個人攻撃だとは思わないだろう。

 セネガル戦の後、本田圭佑選手が「(選手評価の)上げ下げは、僕だけにしてほしい」と話したとされるが、この発言は”手の平返し“報道への痛烈な皮肉でもある。私はそのように深読みしたが、どうだろうか。人間は成功よりも失敗からはるかに多くを学ぶ。日本が決勝トーナメントに進んだあかつきには、そんな温かくて厳しい論評がぜひほしい。 (俊)

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