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2019年4月23日

【ブック&コラム】『「承認欲求」の呪縛』

期待に潰されないために

c190416.jpg著者:太田 肇
新潮社、定価780円+税

 

 これまで「承認」のプラス面(褒めると伸びる効果)を訴求してきた著者は、本書では一転、マイナス面に着目している。仲間ウケを狙ってSNSに問題動画を投稿したり、世間から認められたくて重大犯罪を起こしたりする反社会的行動に走るパターンが1つ。さらに本人が意識していない危険なパターンもあると語り「承認欲求の呪縛」と言い当てている。

 典型例にメダリストの自殺を挙げ、「認められたがゆえに逃げ場を失う」構造を解き明かしている。称賛されるキャラを演じ続けて無理を重ねたり、「責任感がある」という評価に応えようとして過労死に追い込まれたり、落ち目を恐れたエリートが不正に走ったりするケースには、いずれも同質の病理が認められると指摘。褒めてやる気を引き出すマネジメントが「承認欲求の搾取」と紙一重にある関係も見出している。

 後半では、呪縛から解放されるために、①認知された期待を下げる、②自己効力感を高める、③問題の重要性を下げる、という3方向からの処方を整理し、脱出のヒントを詳述している。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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