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2014年10月20日

規制改革会議の今後の検討項目と手順

雇用改革へ「多様な働き方の実現」目指す

is141020.JPG 今年6月の「日本再興戦略改訂2014」に提言を盛り込んだ後、議論の中心テーマとあり方を検討していた内閣府の規制改革会議(岡素之議長)が、来春の新たな提言に向けて再び始動した。「女性の活躍推進」や「地域活性化」など、安倍内閣の掲げる施策を後押しするのが狙いで、会議全体のテーマは「多様な働き方を実現する規制改革」だ。このほか、同会議の主な動きとして、雇用ワーキング・グループ(WG、鶴光太郎座長)が9月、派遣禁止業務のひとつである建設業の緩和など7項目の検討を所管省庁の厚生労働省に要請している。(報道局)

「現場ニーズ」の視点へ検討切り替え

 10月10日に開いた全体会合で、雇用改革に関する議論の方法などを確認し、公表した。同会議では、すべての人が能力を発揮できる社会の実現には、多様な働き方が選択できる環境づくりが不可欠と判断。男性中心のフルタイム労働、新卒採用、職務無限定(正社員)など、特定の働き方が雇用制度の「暗黙の前提」になっていると指摘している。制度面から雇用のあり方を検討してきた従来の方式を改め、今回は働く現場の多様なニーズを切り口に、阻害要因となっている仕組みを見直す提言方法に切り替える。

 出発点となる「働き方に関する具体的なニーズ」を得るため、10月から年明けにかけてヒアリングを実施する方針だ。対象は(1)子育て・介護と仕事の両立を切望する層、(2)キャリアに基づき自由な働き方を望む層、(3)ベンチャー企業や自営業など、大企業とは異なる働き方の層、(4)大企業において新たな働き方で働く層――を想定している。

 ここで集まった声を参考に、関係団体などとの意見交換も行うほか、公開ディスカッションの開催も試みる方針。来年3月をメドに同会議としての提言を発信する計画だ。議論を進める留意点として、「技術的な制度論よりも、誰にでも分かりやすいメッセージ性を持った議論の展開」を挙げているのが特徴と言える。2012年の政権交代で復活した規制改革会議だが、その提言が十分に制度改革に反映されていない現状を踏まえ、世論への効果的な発信方法とプロセスを重要視したとみられる。

派遣制度の見直しも引き続き検討

 メディアの注目度が高い労働者派遣制度の見直しについて経緯を整理すると、昨年6月に業務区分の廃止や期間制限の見直しなどの提言を行い、現在開会中の臨時国会に提出されている労働者派遣法改正案の策定に一定の影響を与えた。

 一方で、同年10月に追加提言した(1)日雇い派遣の原則禁止の見直し、(2)労働契約の申込みみなし制度の廃止を含めた見直し、(3)グループ企業への8割規制の抜本的な見直し、(4)派遣元のマージン率公開の廃止、(5)1年以内の離職者の派遣禁止に対する「適切な例外規定」の容認――の5項目は、上程中の改正案に盛り込まれず、労働政策審議会での積み残し課題となっている。

 さらに今年9月、所管する厚労省に検討を要請した項目がある。7項目のうち、3つが派遣制度に関するもので、いずれも大阪府と大阪市などが同会議に提案した。「特区」絡みの部分もあると思われるが、内容は、①建設業の派遣禁止の緩和、②日雇い派遣の禁止の緩和、③労働者派遣事業の許可基準の緩和――で、現段階で一足飛びに緩和に向かう状況にはない。しかし、さまざまな方面の提案の中から、この3点を抽出した視点には、派遣制度に関する規制改革会議の大きな方向性が込められていると考えられる。
 

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