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2016年8月20日

アドバンスニュース「報道局だより」21・オリンピック取材の話(4)"帰国したくない病"

 異国の地で、3週間以上にわたるオリンピック取材は過酷だ。入国時は緊張感とハードな取材や執筆、撮影などのプレッシャーも相まって、「一刻も早く帰国したい」という気持ちの記者が少なくない。プレス専用の宿泊先の朝食バイキングのルームで、そうした内心を愚痴る日本人記者の声を幾度も耳にした。筆者も同様な心境だったと記憶している。

tayori.png ところが、オリンピックも中盤を過ぎ、閉会式が近づくころになってくると、今度は真逆に“帰国したくない病”に陥る傾向がある。宿泊先の間取りやプレスセンター内のお気に入りのファストフード店にも迷わず行けるようになり、生活面における不自由が和らぐことが理由のひとつだろう。

 また、最初は同じ日本人ながらも他社の記者、つまりはライバル社の人と選手の取材を介して会話が弾み、競技会場ごとの限られた電源プラグなどを貸し借りして互いに助け合うことも。オリンピック取材があと数日になってから、同じ料金の宿泊先なのに、部屋にバスタブがある部屋とシャワーだけの部屋の違いが判明したり、ベットメイキングの毎日のチップが不要の「特別ルール」があったりと、打ち解けた会話の中で気付くことが多い。日本人記者だけでなく、外国人記者との交流も終盤ならでは醍醐味だ。

 当初は、頭が混乱するほどの競技日程や取材場所も、残りわずかに。話題は、「日本に帰ったら、あの苦手なデスクとまた隣り合わせだ」、「帰国したら転勤が決まっている。不安だ」など、それぞれの理由から“帰国したくない病”がまん延してくる。競技を終えた選手たちも、お土産や自身へのご褒美の買い物などを笑顔で楽しむ姿も見られ、開催地域全体にある種の解放感が漂う。この“病”は記者だけでなく、厳しい練習に耐えて勝負に挑んだアスリートの方が強いのは間違いなかろう。

 入国の時は、イライラするほど審査が厳重で、こちら都合で勝手に言えば「この国の入管は要領が悪い」と感じた荷物チェックなども、帰りの空港は比較的緩やか。開会式は各国の選手団や記者、関係者たちが一斉に集まるが、目的の競技を終えると帰国する人たちもいるので猛烈なラッシュにはならない。体力はかなり消耗しているものの、名残惜しく帰国の途に就く。選手や読者、視聴者が満足いく発信ができたかを振り返りながら。 

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