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2016年10月22日

アドバンスニュース「報道局だより」30・水産担当の醍醐味

 報道、あるいはニュースと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、政治、経済、社会(事件・事故)、外交、教育・福祉、文化といった分野であろう。確かに、これらのカテゴリーは大概の媒体が報道局内に「部」というまとまりで配置しているケースが多く、新聞ではそれぞれに毎日割り当てられた固定の紙面を持っている。

tayori.png そうした中で、経済部か社会部のどちらに含めているかは媒体ごとに異なると思うが、「水産担当」を有している新聞社がある。太平洋や日本海に面し、国内有数の漁港がある地方紙に見られ、四方が陸地だけの新聞社には存在しない。筆者が新聞記者時代は、たまたま太平洋に面した大型漁港があり、この水産担当を経験した。

 一体、何をするかって。担当を命ぜられた時は自身もそう思った。社会部に比べると過酷ではなく、毎日、他社媒体との記事の「抜いた、抜かれた」の世界から脱することができるのかという糠(ぬか)喜びもあった。何せ、前任の担当記者と日ごろ顔を合わせたり、仕事帰りに一緒に飲んだりすることがあまりないという理由もあった。

 担当して現場を体感し、いろいろな「事実」が解明されていくことになる。まず、いま東京・豊洲市場(しじょう)移転問題が小池百合子都知事の手腕と併せて注目されているが、こうした「卸市場」の開始時間は早朝6時前ぐらい。しかし、漁港から水揚げされる時間はその2~3時間ほど前に行われる。これを毎日、豊漁や不漁、「珍魚が網に入っていた」なども含め、その後に開場する卸市場の相場動向とセットで取材するのだ。つまり、現場への“出社”が午前3時半ごろなので、帰宅も夕刻で、自ずと一般の記者とは生活時間帯がズレてくる。

 この「水産担当」。駆け出しのころは、市場関係者の気の荒さと、それを上回る漁船乗組員の気迫に押されて、口も聞いてもらえず心が折れそうな時もしばしば。まだ、日の出前で薄暗いし、冬は身体が底冷えする状況も、気の沈みに拍車を掛ける。ところが、担当して1年が経過すると、あれほど怖かった市場や漁船関係者が裏表無しで接してくれ、8時で概ね市場が終わると一緒に近所の銭湯に行き、市場の舞台裏や漁船が海域で他国漁船と激しくけん制し合う最前線の話を聞かせてくれる。取材時間帯や独特の緊張感と喜び。「水産担当」には、他の部署では味わえない醍醐味があると思っている。

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