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2023年4月27日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」172・労働・社会保険行政の連携について

Q 労働・社会保険の適用についての通達が出されたと聞きましたが、どのような内容のものでしょうか。

koiwa1.png 昨年末に全世代型社会保障構築会議報告書がまとめられたことを受けて、3月31日付で都道府県労働局長および日本年金機構理事長宛に、「被用者保険の更なる適用促進に向けた労働行政及び社会保険行政の連携について」(令和5年3月31日基発0331第52号・年管発0331第5号)の通達が出されました。従来から被用者保険である労働保険と社会保険は適用促進に向けて連携が図られてきましたが、そのさらなる強化を目的としています。

 ライフスタイルや国民の意識の変化、コロナ禍の影響などもあり、いわゆるフリーランスの働き方をする人が増えつつありますが、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和3年3月26日)では、フリーランスも労働者に該当するケースがあることが示され、行政においても従来から社会保険(年金事務所)と労働保険(労働局)が連携して適用促進が進められてきました。今回の通達では、労働基準監督署が労働基準法上の労働者であると判断した事案について、年金事務所や労働局に情報提供を行い、ケースに応じて年金事務所と労働局が合同調査を行うなどの方針が示されています。

 また、労働局や年金事務所がフリーランスなどから労働や社会保険について相談を受けた場合には、所管外の法令などについては通達に別添されたリーフレットなどを用いて説明し、所管する部署を伝えるなどの対応をすべきことが示されています。「労働保険・社会保険(厚生年金・健康保険)への加入手続きはお済みですか?」とするリーフレットには、労働保険と社会保険の適用要件が図示されて分かりやすくまとめられています。このリーフレットの特徴は、「形式的には雇用契約を締結していない場合でも、労働保険・社会保険が適用される場合があります」とした上で、以下のように労働者性をめぐる判断基準のチャートが示されているところにあるでしょう。

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 「形式的には雇用契約を締結せず、フリーランスとして請負契約や準委任契約などの契約で仕事をしている場合であっても、労働関係法令や社会保険の適用に当たっては、契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて判断します」というのは、従来から昭和60年厚生労働省「労働基準法研究会報告(労働基準法の『労働者』の判断基準について)」などによって確認・維持されてきた国の基本的な考え方ですが、今後のフリーランスをめぐるあり方や展望などを見据えて、労働保険や社会保険の適用の場面で確実な周知が図られる必要性があることから、今回の通達が示されたことの意義は大きいといえるでしょう。特にリーフレットについては論点が簡潔に整理されていますので、実務の現場で有効に活用していきたいものです。

「被用者保険の更なる適用促進に向けた労働行政及び社会保険行政の連携について」(令和5年3月31日基発0331第52号・年管発0331第5号)


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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