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2025年11月 4日

【ブック&コラム】『「就職氷河期世代論」のウソ』

世代論と困窮者救済策は別問題だと警鐘

c2510_2.jpg著者・海老原 嗣生
扶桑社、定価1045円(税込)


 履歴書を何百通も送った、ブラック企業にしか就職できなかった、派遣を転々とするしかなかった......と報じられる就職氷河期世代の姿は錯覚であり、少なくとも「典型」ではないと本書はデータで検証していく。

 バブル世代との比較では、求人数の差はあるものの就職者数はあまり変わらず、氷河期世代だから大手に採用されなかったという現象は起きていないと断言する。また、企業が一般職採用を廃止し、四大卒女子が増えた時期に重なるので、苦戦する男子学生の声が氷河期のせいだと誤認されたのではないかとも疑う。マクロ・時系列で見れば給料が少ないのは全世代の傾向であり、非正規労働者は大卒以外の層が多く占めていることから、氷河期と結びつけて批判する根拠は薄いと語る。

 転じて、幻想である「就職氷河期」を問題化し、こじらせたのは誰かと問い、マスコミの無知と政治家のご都合主義をあぶり出していく。最終章では、氷河期世代に限定して分配を厚くする困窮者救済策は本質的に間違いだと述べ、「本当に効く雇用対策」を提案している。


(久島豊樹/HRM Magazine より)

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