コラム記事一覧へ

2020年6月 4日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」23・新型コロナウイルスの雇用調整助成金の特例措置⑤

Q 雇用調整助成金の上限が1万5000円に引き上げられると聞きましたが、すでに申請した事業所については従来の上限のままなのでしょうか。

koiwa.png 2020年度第2次補正予算案で新型コロナウイルス感染症対策関係経費として雇用調整助成金の拡充等が盛り込まれ、上限が8830円から1万5000円に引き上げられる予定です。通常国会の会期末の6月17日までに成立が目指されることになりますが、目下の経営難や雇用不安に苦しむ現場には一刻の猶予もないことから、「それまで待てない」という声も聞かれます。

 この特例は「公布の日」から施行されることになっていますが、上限の引き上げ等の適用が遡及されるかどうかは現段階では明らかではありません。「新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律案要綱」の中で、以下のように記述されているのが参考になります。

国庫は、令和二年度及び令和三年度における第四の事業並びに同事業を実施する期間において当該事業と関連して行われる雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業及び同項第六号に掲げる事業(新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響に対応するために実施するものであって、厚生労働省令で定める事業に限る。)に要する費用の一部に充てるため、必要があるときは、予算で定めるところにより、その費用の一部を負担することができることとすること

 「第四の事業」は新設される新型コロナウイルス感染症対応休業支援金、「当該事業と関連して行われる雇用保険法第六十二条第一項第一号に掲げる事業及び同項第六号に掲げる事業」は雇用調整助成金のことを指します。新型コロナウイルス感染症対応休業支援金と雇用調整助成金は同時期に実施されると書かれていますので、これを見るかぎりでは上限の引き上げ等も緊急対応期間の4月1日に遡って適用される可能性が高いと思います。

 第2次補正予算が成立するまでは確定的なことはいえませんが、引き上げを見込んで申請を控えることで逆に雇用状況が悪化したのではまったく意味がありませんので、現実的な対応が取られることを期待します。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

PAGETOP