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2020年7月16日

小岩広宣社労士の「人材サービスと労務の視点」29・新型コロナウイルス感染症の見舞金の取扱い

Q 新型コロナウイルス感染症に関連して従業員に見舞金を支払った場合、社会保険の取扱いはどうなるのでしょうか。

koiwa.png 新型コロナウイルス感染症の影響で被害を受けたり、生活が苦しくなった従業員に対して、会社が見舞金を支払うことがあります。このような見舞金はもちろん労働の対価としての賃金(報酬)ではありませんが、従業員が会社から受ける手当という側面もあることから、社会保険の取扱いがどのようになるのかが気になるところです。

 この点について所得税の取扱いについては、5月15日付の通達(「新型コロナウイルス感染症に関連して使用人等が使用者から支給を受ける見舞金の所得税の取扱いについて」)で、以下の要件に該当するものは所得税法上の非課税所得に該当することが示されました。

① 見舞金が心身又は資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること
② 見舞金の支給額が社会通念上相当であること
③ 見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと

 このうち①については、緊急事態宣言の下で多数の者との接触を余儀なくされるなど新型コロナウイルス感染症に感染する可能性が高い業務に従事している者や、緊急事態宣言がされる前と比較して相当程度心身に負担がかかっていると認められる者が該当します。医療業務などに従事している従業員はもちろん、緊急事態宣言によって業務の範囲や時間外労働などが増えた従業員なども含まれるでしょう。

 社会保険については6月16日に通達(「新型コロナウイルス感染症の影響に関連して支給される見舞金等の取扱いについて」)が出され、所得税に準じた取扱いをすることが示されました。したがって、上記の要件に該当する場合は社会保険の報酬や賞与には算入しないことになります。

 なお、見舞金については、慶弔規程や過去の取扱いなどに照らして、感染のリスクや可能性に応じた金額となっていることが求められ、緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給されたものは見舞金に該当しない場合があることにも注意する必要があります。第二波への懸念も高まっていますが、就業規則や慶弔規程の整備などにも必要に応じて取り組んでいきたいものです。


(小岩 広宣/社会保険労務士法人ナデック 代表社員)

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