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2024年2月20日

【ブック&コラム】『世帯年収1000万円』

収入と支出の残酷な真実とは?

c2402_1.jpg著者・加藤 梨里
新潮社、定価880円(税込)

 「平均年収400万円の時代に年収1000万円はぜいたくなのか?」と問いを立て、ファイナンシャルプランナーの著者が該当世帯の家計を探る。主に、住宅・教育・生活費の3つの支出項目に着目し、残酷な真実(本書副題)を浮き彫りにしていく。住宅では、物件価格が上昇する一方で組めるローンは限られると指摘。教育費では、大学進学まで子供1人に1000万円はかかると試算し、公的支援はあっても年収基準で対象外に置かれ、かえって負荷が集中すると分析する。生活費では、共働きゆえにシッター代、家事代行、家電コストなどで膨らむ負担を算出している。

 興味深いのは『クレヨンしんちゃん』『サザエさん』『ちびまる子ちゃん』の家庭をモデルにしたシミュレーションの展開だ。ひろしとみさえが共働きだったら、イクラちゃんがお受験でタイ子さんがパートに出たら、まる子とお姉ちゃんが奨学金を借りたら、と計算する試みは面白い。

 年収1000万円世帯とはいえ、教育負担を乗り切ったら老後が成り立たなくなるケースもあり、楽観はできそうもない。

(久島豊樹/HRM Magazine より)

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