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2017年4月 4日

【書評&時事コラム】「パン屋さん」「おじさん」はなぜダメなのか

 来年度から小学校の正式教科になる「道徳」の教科書検定で、「×パン屋さん→○和菓子屋さん」消防団の「×おじさん→○おじいさん」といった文部科学省のクレームが付き、教科書会社もそれに沿って修正し、めでたく合格したという。最初にテレビニュースを見た時は、「何でだろう」くらいに思ったが、新聞などで詳細を知るに及び、あまりのくだらなさにあ然としてしまった。

c170404.JPG 毎日新聞によると、日本の文化や郷土愛を育てるには「パン屋」よりも、伝統的な「和菓子屋」の方がベター。消防団の活動に感謝するには、中年のおっさんより高齢者の方が感謝の念が強まるということのようだ。それも、文科省側が「和菓子屋にしなさい」「おじいさんにしなさい」と指示するのではなく、検定意見に従って教科書会社側が“自主的に”変えるのだ。これぞ、「忖度(そんたく)」の現代的使用の典型であろう。

 和菓子屋が日本の伝統食文化の一翼を担っている点は確かだが、理屈を言えば、現代の和菓子は、その原材料の大半を輸入に頼っている。消防団員の中にはおじいさんもいるだろうが、失礼ながら50~60代の男性には「おじさん」か「おじいさん」かはっきりしない人もいる。それに、「おじさん」なら心から感謝しなくてもいいのだろうか。こんな教科書を使って教える先生も大変だろうなあ。

 そもそも、素朴な疑問として、法律を堂々と破って大量のOBを大学に天下りさせてきた文科省が、「道徳」に検定意見を付けるなど、ブラックジョークもいいところ。この役所を覆うコンプライアンス(法令順守)の欠如を示すわかりやすい教材として、「道徳」の教科書に取り上げる会社はないのだろうか。ないだろうな。 (俊) 

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