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2014年9月13日

【この1冊】『アベノミクスの終焉』

客観的データによるアベノミクスへの警鐘

c140913.png著者・服部 茂幸
岩波新書、定価740円+税


 著者は前著『新自由主義の帰結』(2013年、岩波新書)で、2008年の金融危機を招いたのは、米国主導で進められた「新自由主義」の経済政策であると述べているが、現在、政府・日銀が「アベノミクスによって日本経済は回復しつつある」としきりに宣伝していることについても、「経済の実態を正しく伝えていないばかりか、過去の誤りが繰り返されている」と警鐘を鳴らす。

 具体的には、「第1の矢」である金融緩和策(異次元緩和策)が株価の上昇や円安をもたらしたわけではないことを客観的データを基に説明する(第1章)。さらに、この異次元緩和策の理論的基礎を示しつつ、それを批判する(第2章)。「第2の矢」である財政政策も「国土強靭化策」の名の元に実施されているが、過去の公共投資の焼き直しであり、財政赤字の累増を招いている(第3章)。最も重要な「第3の矢」である「成長戦略」も十分に機能していないと説く(第4章)。

 かくして、アベノミックスは「政治のレトリック」に使われているだけで、経済の現実と乖離しているばかりではなく、「08年の危機で死に絶えるはずだったリフレ派の経済学のようなゾンビ経済学を甦らせてしまった。」と結論づけている。

 しかし、著者が本当に言いたいことは、権力にすり寄る経済学者が多い中で、「我々経済学者がすべきことは、政治のレトリックに加担することではなく、本当は何が起きているかを明らかにすること」ではないだろうか。その意味で、すべての経済学者と経済政策に関わる政治家や官僚らの必読書と言ってよい。 (酒)

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