厚生労働省は4日、スポットワークの利用企業(事業主)向けに労務管理の注意点を整理したリーフレットを公表した。労働契約の成立時期や解約(キャンセル)に至る場合の対応など、スポットワークのサービス特性から生じる労働法規上の注意点と順守事項について整理。併せて、就労先とのトラブル回避を目的にワーカー向けのリーフレットも作成した。また、利用企業とワーカーを結ぶ雇用仲介アプリ事業者の業界団体に対して、利用企業の法令順守と労働者保護を促進する適切な支援および周知・啓発の協力を依頼。これを受けて事業者団体の一般社団法人スポットワーク協会は同日、労働契約の成立時期などに関する統一見解を発表し、協会会員各社で必要な対応を進めていく方針を示した。
スポットワークを巡っては、アプリの登録者数や利用者数の増加に伴い、賃金不払いや求人内容と実際の業務内容が異なるといった相談・申告が都道府県労働局などに一定数寄せられており、厚労省が実態把握と対応に乗り出していた。今回の厚労省による注意点の整理・公表と事業者団体による「労務管理の考え方」(協会リーフレット)の公開で、課題のひとつとなっていた労働契約関係の整備が一段進むことになる。
厚労省のリーフレット
利用企業(事業主)向けのリーフレットのタイトルは、「『知らない』では済まされない・『スポットワーク』の労務管理」。リーフレットにおけるスポットワークの定義として「短時間・単発の就労を内容とする雇用契約のもとで働くこと」「スポットワーク仲介事業者が提供する雇用仲介アプリを利用してマッチングや賃金の立替払いを行うものを対象」としている。
内容は(1)労働契約締結時(2)休業させる場合(3)賃金・労働時間――に関する各注意点と(4)その他――で構成。(1)では、誰と誰が労働契約を締結するのかの確認、労働契約の成立時期の確認、成立後の解約(キャンセル)の際にワーカーのみ不利にならない対応――などを労働法規に照らして明示し、ワーカーと仲介事業者が労働契約を結ぶものではないことなどを強調している。(4)その他の項目では、「通勤途中・仕事中にケガをした場合の対応」のほか、「労働災害防止対策」「ハラスメント対策」が事業主の義務であることを記した。
ワーカー向けのタイトルは「『ご存じですか?』スポットワークの注意点」と題し、利用企業向けの内容をワーカー視点から説いて、労働条件通知書の確認などのほか、雇用主の指示で待機を命じられた時間も労働時間に該当するといった知識や権利が明記されている。
スポットワーク協会のリーフレット
スポットワーク協会(米田光宏代表理事)は同日、協会ホームページに「スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方」を発表。今年2月に開いた報道機関対象の活動報告会において「雇用主と求職者における雇用契約成立時期のあり方」を協会内で議論していることを明らかにしていた(下記・関連記事参照)。
協会リーフレットによると、契約成立時期は「働き手が求人への応募を完了した時点で『解約権留保付労働契約』が成立」とした。そのうえで、成立から就労開始までの間の労使双方の解約条件について整理し、ワーカーは原則として理由を問わず解約可能(就労開始24時間前以降は、スポットワーク仲介事業者によってはペナルティあり)」、使用者は「原則不可だが条件により解約可(就労開始24時間前を境に条件が異なる)」として、キャンセルポリシーの詳細を表にして記載した。
解約時においては、ワーカーの就労準備が無駄になったり、その日の別の就労機会を見つける時間的余裕がなくなることを防ぐ観点から「24時間前」を下回らないものとするとともに、この時間までにワーカーが解約した場合はスポットワーク仲介事業者のペナルティは課さないとすることも記した。9月1日以降、順次、会員各社がシステムの構築を含めた対応を進める。
■スポットワークサービスにおける適切な労務管理へ向けた考え方
今回の厚労省とスポットワーク協会のそれぞれの対応は...
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