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2019年2月21日

中宮伸二郎社労士の「労務の心得」8・1カ月100時間、複数月80時間の計算方法

Q 1カ月100時間、2~6カ月平均80時間以内の時間外・休日労働の時間は安全衛生法の過重労働対策のための100時間(2019年4月から80時間)と同じ計算方法でよいでしょうか。

nakamiya03.png 安全衛生法、労基法どちらも過重労働の防止を目的としていますが、異なる計算方法となります。
 安全衛生法の過重労働対策のための時間外・休日労働は、歴日数から法定労働時間の上限を算出し、その超過時間を時間外・休日労働とするため、祝日が所定休日である場合、祝日の多い月は実際の法定時間外労働より少ない時間となります。以下の例では、30時間の時間外労働があるにもかかわらず、安全衛生法の計算では残業していないことになってしまいます。

 例:2019年1月の所定労働日数 18日 所定労働時間1日8時間
   1日8時間を超える時間外労働 30時間 
   所定休日、法定休日の勤務無し

   31日÷7日×40時間=177時間(法定労働時間の上限)
   18日×8時間+時間外30時間=174時間(実労働時間)

 労基法の1カ月100時間、複数月平均80時間以内の時間外労働は、法定時間外労働、休日労働の累計によります。安全衛生法の計算と異なるだけではなく、時間外・休日労働の割増賃金の時間数と一致しない可能性もあります。例えば7時間労働で8時間以内の時間外労働に割増賃金を支払っている場合や祝日に出勤したが週40時間以内である場合等、割増賃金義務がなくても割増賃金を支払うことも多く、給与計算上の割増賃金対象時間は、そのまま使える数値ではありません。

 割増賃金が法定労働時間以外にも支給されている場合、正確に対象時間を算出するためには給与計算とは別に法定時間外、法定休日労働の時間数を把握する必要があります。特に翌月残業可能時間を計算する必要に迫られているときは注意が必要です。

(中宮 伸二郎/社会保険労務士法人ユアサイド 代表社員)

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