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2019年7月23日

【ブック&コラム】『労働法入門 新版』

なぜ「働き方改革」が必要なのか

c190723_0.jpg著者・水町勇一郎
岩波新書、定価860円+税

 

 今年4月から施行された一連の「働き方改革法」は、多くの日本人がなじんできた従来の働き方を大きく変える内容であることから、企業と労働者の双方に戸惑いが生じ、関心も高まっている。そんな時期に出た、労働法学者による本書は労働法制をおさらいする格好の1冊となっている。

 「労働法はどのようにして生まれたか」から「労働法はどこへいくのか」まで全10章構成。採用、人事、解雇、賃金、労働時間、労働組合、就業規則など、サラリーマン生活を取り巻く制度が、どんな法律を基盤としているのか、何が問題なのかなど、かなり詳しく解説している。

 本書を読むと、日本で戦後定着した終身雇用制の下で生まれた「正社員中心主義」が各種法令や裁判結果の背景となってきたものの、終身雇用の衰退とともに時代に合わなくなってきたことがよくわかる。そうした過渡期にあっても、働く人の権利を守る法制度はどうあるべきか、著者の持論も随所に散りばめている。

 著者は政府の労働政策審議会の公益委員を務めるなど、この分野のエキスパートとして活躍中。ただ、「一般市民向け」に書いたとはいうものの、複雑に入り組んだ制度だけに、かなりむずかしい部分も多く、丹念に読み進める必要がある。(俊)

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